倒錯の夏
第7章 三日目・8月8日 美津子
菜穂は表向き、いつもと変わらないように振舞っているつもりだったのだろうが、私は何か押し殺しているものに耐えようとしているように感じた。
夫もそれを直感したのか、昨日の無断欠勤のことで彼女を責めたりせず、かといって何があったのか聞き出そうともしなかった。
・・・・・・いいひと。普段のちょっとした頼りなさも含め、結婚したころは主人の全てを好きと、ためらいなく言えた。でも、最近は、彼の全てが発作的にイヤになってしまうことがある。
主人にはすまないと感じつつ、そういう時は強くあたってしまうことが多いみたいだ。主人の私への愛情は十分に感じている。だから、これは、私の、主人に対する甘えなのかもしれない。
しかし、正直、主人が私を愛してくれているのと同じ位に、私は主人を愛しているのか、時々わからなくなることがある。
・・・・・こんな、片田舎にこもりっきりの生活から抜け出せたなら、もしかするとそれを確かめられるんじゃないか・・・なんて。
結婚8年目、しかも殆ど夫婦だけの単調な生活に少し疲れているのかもしれない。
昼食の片付けが終わってから、菜穂に、何か困ったことがあったら・・・と何気なく切り出してみた。”今日は疲れているみたいだから、もう休んでいいわよ”、とも言った。
すると、彼女は突然泣き出して、私に抱きついてきた。「わたし、わたし・・・」と繰り返すばかりで、ただ泣きじゃくるだけだった。
私は何とか彼女を落ち着かせて話を聞こうとしたが、彼女は肝心なことは口に出してはくれなかった。
「じゃ、今夜、2人だけで、街、行こうか」
私の提案に、菜穂はやっと微笑して、頷いてくれた。
コメント
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コメント (1)
これ懐かしいですね。
もっと続きがあって旦那視点でSEX中の奥さんと対面するシーンまで作者が書いていましたが、その後すぐにサイトごと消滅してしまいました。
あとこの作品とほぼ同じ文章表現の作品に「体験告白、嬲り犯される心」があります。
この作品の方が古いオリジナルで「体験告白、嬲り犯される心」の方がパクリの盗作です。