倒錯の夏
第6章 二日目・8月7日 束の間の失踪
その夜、菜穂は民宿に帰ってこなかった。浜辺でのガキどもの世話から開放されて、私が民宿に帰り着いたのは夕方遅くなってからだった。
時間的には、直ぐに食事の予定だったが、厨房には2人分の仕事に忙殺されていささか苛立ち気味の美津子の姿しかなかった。
「もう、菜穂ちゃんどこに行ったか知らない?」
妻のやり場のない感情は、当然のように疲れて帰ってきたばかりの私に向けられた。
「あ?一日、お前と一緒じゃなかったのか?」
「従業員の行動くらい把握しときなさいよ!」
美津子はそう吐き捨てつつ、私の横をすり抜けていった。夕暮れ後とはいえ、昼間の猛暑はまだそこら中に充満していた。
その上、広いとはいえない食堂の殆どを埋め尽くしている、疲れを知らないガキ共が発する熱気で、中は坩堝のようだった。
そんな動物じみた奴等の間を、ぴたぴたのジーンズにTシャツという格好で身体をくねらすようにすり抜け、客であるガキ共をかいがいしく世話する妻の後姿は、
異様ななまめかしさを放ち、私に反論の隙を与えなかった。
それどころか、むしろ私の視線は、汗ばんだ彼女が揺らす、大きめの尻に暫くの間釘付けになり、その場を動けないでいた。
・・・・・最近では殆ど全く意識することは無くなっていた筈の、彼女に対する性欲が、急にどろどろと湧き上がっていることに私は戸惑った。
”あいつも、まだいけるんだなぁ・・・”
阿呆みたいにぼーっと突っ立ちながら、しかし、私は、純粋に彼女の身体にだけに興奮しているのではないことに気が付いていた。
その時、私は殆ど無意識に、一昨日の夜、マイクロバスの中で”なおき”が言った言葉を反芻していたのだ。
”俺くらいの経験者になると、奥さんファンだなぁ~・・・・・”
さらに意識するまでも無く、私はガキ達の中に、”なおき”の姿を見つけていた。
中学生は、テーブルに着いた彼の子分たちに相変わらずのガキ大将ぶりを撒き散らしながら、おふざけに興じていた。私は、配膳する妻と彼の姿が重なるのを待った。
妻が、その中学生の後ろのテーブルに皿を配るとき、彼女の張った尻は彼の頭の高さに突き出され、角刈りのにきび顔の間近を通過していった。
中学生はふざけ笑いつつも、その眼は冷静に、持て余すほどのボリュームを持つ人妻の成熟した肉丘を観察していた。・・・・・少なくとも、私はそう感じた。
夕食後、私と妻は、隣町の繁華街まで菜穂を捜しに行ったが、彼女の形跡は無かった。
「めずらしいわね・・あの娘にしては・・。男かしら?」
「もめてるのかもな・・・。明日、昼までに帰らなかったら警察行った方がいいかな」
しかし、菜穂は、翌朝早くに帰ってきていた。朝食の準備に厨房に入ると、下ごしらえを始めている彼女に出くわした。
彼女は自分から、昨夜のことを丁寧に謝った。私は妻に彼女を任せ、何にも触れないでおくことにした。
コメント
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コメント (1)
これ懐かしいですね。
もっと続きがあって旦那視点でSEX中の奥さんと対面するシーンまで作者が書いていましたが、その後すぐにサイトごと消滅してしまいました。
あとこの作品とほぼ同じ文章表現の作品に「体験告白、嬲り犯される心」があります。
この作品の方が古いオリジナルで「体験告白、嬲り犯される心」の方がパクリの盗作です。