倒錯の夏
第4章 二日目・8月7日 ボランティアの罠
妻と菜穂に送られてからの、海までの道のりは拷問だった。ガキどもの騒音は朝食でエネルギーを得て、暴力的領域にまで達していた。
腹痛を訴えた中1の”達也”と、彼に付き添うといって聞かない小6の”淳”を民宿に残して来たものの、その五月蝿さには変化無かった。
小村夫妻のワゴンは、私の運転する民宿のマイクロバスの後ろに追いてきていた。海に着いたらテント設営、バーベキューセットを出して火を起こす・・等々の作業が待っている。
もちろん、ガキどもとの共同作業だ。海に身を投げようかと思った。小村健司は作業をしていたが、みのりの方は何もしないでずっと砂浜に座ったままだった。
黙々と作業をする健司の横に何気なさを装って付き、話しかけた。
「いやぁ、夫婦って、なかなかやっかいなもんですよねぇ・・奥さんとけんかでもしたんですか?」
人のことに首を突っ込むのは趣味じゃないが、この場合、聞かずにはいられなかった。
「・・はは・・、アレですか・・いやぁ、元々ああいうところが気に入って一緒になったんで・・いつもあんな感じなんですよ。それはそうと、昨日の夜はありがとうございました・・。奥さんにはお世話になって・・」
「ああ、見付かってよかったですね。小村さんの奥さんも大変だったでしょう・・?」
「いやぁ・・・それが・・・いなかったんですよ、その時。で、探してたのは・・ほら、有紀と直樹って、あそこで遊んでる中学生のコンビ・・だったんですよ」
急に健司の声が低くなった。
「実はご主人には言うか言うまいか迷ってたんですが・・昨日の夜、何かありませんでした?」
私は答えに詰まった。
「あぁ・・やっぱり、そうですか・・。みのりがあいつらを”見つけて”きたんですよ・・・」
「・・・・・そうですか・・。ご主人、知ってらっしゃるんですか?」
「えぇ・・まぁ・・ね。昨日の晩も・・”そう”だったんでしょう?・・はっきりおっしゃってくれて結構ですよ・・ここまでご主人に分かってもらったなら、相談に乗ってもらいたいんですが・・」
「はぁ・・見ました。・・健司さんの車の中で・・・」
「そうですか・・」
わたしたちは、しばらく沈黙した。
「とりあえず、そっとしておくのが一番だと思いますがねぇ・・相手は中学生でしょう?」
「いや、それが・・最近は私も、その”子供”を持て余してるんです・・この前・・、実は自宅で直樹と妻が一緒にいるところを見てしまって
・・引き剥がしにかかるところを、逆に押さえ込まれたんですわ。恥ずかしながら・・中学生に。それから・・あいつ、やりたい放題なんですわ・・」
「奥さんのほうは・・?」
「いや、それが・・なぜか・・というか、信じたくはないんですが、中学生から離れられないみたいなんです・・」
「うそでしょう?」
「いや・・妻も、私が最終手段に訴えられない気持ちがあることを知ってるんで・・。どうしたもんでしょう?・・・こんなことなら、ボランティアなんて調子に乗るんじゃなかったですわ・・」
「・・・・・そりゃぁ・・この機会に、とりあえず、奥さんとゆっくり話してたほうが良いんじゃないですか?今からでも・・・。準備はあらかた終わったんで、後は片付けの時にでも来てくれれば結構ですが・・」
この話が真実かどうかはすぐには分かりかねた。しかしとりあえず、小村夫妻にはしっかりしてもらって、この2週間は、ガキどもをおとなしくさせてもらわなければ困る。
今の子供はなにをするか分かったモノじゃない。美津子でさえ・・みのりの二の舞にならないとは限らない。今の状態では、檻の中でラム肉を野ざらしにしているようなものだ
「じゃ、おねがいします。すいません」
小村健司はこう言い残すと、みのりとワゴンで去っていった。あとには不気味な子供らとの、苦しく長い午後が残された。
コメント
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コメント (1)
これ懐かしいですね。
もっと続きがあって旦那視点でSEX中の奥さんと対面するシーンまで作者が書いていましたが、その後すぐにサイトごと消滅してしまいました。
あとこの作品とほぼ同じ文章表現の作品に「体験告白、嬲り犯される心」があります。
この作品の方が古いオリジナルで「体験告白、嬲り犯される心」の方がパクリの盗作です。