倒錯の夏
第22章 五日目・8月10日 誘惑
朝食後、子供らはビーチバレーの練習に全員で浜に出た。合宿中にチーム分けして練習し、合宿最終日に試合をするそうだ。これも、問題児たちの社会適応プログラムの一環らしい。ご苦労なこった。
後には久しぶりに私と美津子と菜穂だけが残った。不気味な奴らとの生活も5日目だ。あと半分。・・・まだ、半分も残っている。美津子は朝食の片付けがおわったらさっさと寝てしまった。
昨日の疲れがとれてないらしい。中学生・・・・なおき、とかいう奴との関係が多少気になったが、妻の剣幕に押されて結局突っ込めなかった。
しかし、たかが中学生の一言に踊らされている俺もオレだ、という気もする。
・・・とにかく小村にはあと5日間しっかりしてもらわないと困る。とりあえず、今日の日中は、ガキどもが帰るまでの間落ち着けそうでほっとした。
冷房効かせて、とりあえず帳簿整理を始めた。昼をカップ麺で済ませ、昼ドラを見る。見ながら半分眠りかけたとき、菜穂が部屋に入ってきた。
「買い物終わったのか」
「はい」
「どーした、元気ないぞ?」
菜穂の私への用事を薄々感じた。
「あの、ですね・・・・」
「俺、菜穂が何言いたいか、わかった・・・・・かな?でも、一昨日、美津子と飲みに行ったんだろ?まだ、やっぱ解決しないのか?」
「・・・奥さんには、言えないことなんです」
「ん?じゃ、俺?・・でよかったら・・・、ん~~・・解決するかな??」
「あの」
「んあ!!??」
菜穂は突然私に抱きついてきた。
「好きなんです!」
「は!?」
「あなたが、好き!」
「ええ~~~?!!」
バカみたいに、俺はにやけてきていた。冗談でも、にやけるもだろう、こんなセリフ言われたら。いや、冗談じゃないかも・・・。うわ~~~・・・。
「ちょっと、おい、とりあえず、声出すな。上に美津子、いるぞ」
菜穂の腕を剥がした。しかし、菜穂は離れようとしない。俺の顔を涙目で下から覗き込む。うわ~~~・・・。
「どういう・・・」
菜穂は俺の言葉をさえぎった。
「だから、奥さんには・・・」
「あー・・・」言葉が浮かんでこない。「い、いつから?」・・・ヘンな質問だ。
「もう、最初から!実は、マスターのとこにバイト決めたの、マスターがいたからなんですよ!!」
夏みかん色の屈託ない声。
「うぇぁ?」あ、ヘンな声。「あ~~・・・わかった。お前の気持ち、わかったから。へ~~~、そ~~、か。俺の為にねええ・・」
「うれしくないの?」涙目で見つめるなって・・。
「いや、いやいや、そんなことはない。ぜったい。すごくうれしい。でも、菜穂よぉ、それでいいのか、お前」
「説教嫌い」
「あ~、ほら、お前まだ19だろお、まわりいい男い~っぱいいるだろ?」
「だめ、あ・な・た・が、いいの!」
2人とも、少し落ち着いてきた。その後は帳簿どころではなかった。菜穂と今まで話題にすることのなかった話を続けた。父親のない菜穂は、私にあこがれに近い感情を持っていることもわかった。
「でも、菜穂、それは一時の憧れだじゃん?愛情との勘違い、じゃ、ないかなぁ~・・とも思うケド、なぁ・・」
「いや。マスターじゃなきゃいや。これほど言ってるのに分かってくれないの?一度だけ、抱いてくれれば、諦めるから・・。気持ちに踏ん切りがつくからぁ・・」
・・・・・・・・若い娘に、これだけ言われて、引き下がれるか?というより、菜穂は、正直、寝たい女だと思ってたじゃないか。ここまできたら、妻は誤魔化す、か・・。
「・・・・わかったよ。じゃ、今晩な、俺、行くから」
「ほんと!うれしい・・・。」
涙。おいおい・・。
「ほら、そろそろ仕事だぞ。美津子も来る頃だ。」
菜穂のうれしそうな後姿に俺は見とれていた。年甲斐なく。おれも、捨てたもんじゃねぇな・・・。・・・これ位、少し思ってもいいだろ。
その時、美津子への心配は、跡形もなく吹き飛んでいた。
第23章 五日目・8月10日 ミーティング/菜穂と私
夕食時、私も賄いを手伝った。美津子の体調は相変わらずすぐれないらしかった。風邪でも引いたか・・・そう問いかけたが、「なんだか、そうみたい」との返事で終わってしまった。
しかし、さっきの菜穂との約束が、妻への心配を深刻なものにするのを防いでいた。相変わらずのガキ共の騒々しさも、ほとんど気にならない。俺みたいな中年でも、恋愛気分のまえでは
他愛ないものだ、と冷静さを装いながらガキ共からの騒音の拷問に耐え切ることにした。
夕食後は食堂でビーチバレー練習後のミーティングをやる、と小村に聞かされた。私、美津子、菜穂にも出席して欲しいという。何考えているんだ、この親父。断るに決まってるじゃないかと
思ったら、それを聞いた菜穂と美津子は参加するという。美津子なんか、風邪だろ、と言っても、「面白そう」の一言で出席を決めてしまった。私も、参加することにした。
食堂のカーテンとドアを閉め切ると、ガキ共がテーブル・椅子を並べ替え始めた。ビデオとプロジェクターを用意している。舐めていたが、結構、本格的にやってるらしい。
準備が整うと、白い食堂の壁に今日のビーチバレーの様子が映し出された。のっけから試合の様子。しかし、2~3分毎に一人の子供に視点を集中し、集中的に撮っている。
個人のプレーの長所、欠点が一目瞭然だ。少し感心しつつ、私はしばらく美津子や菜穂のことを忘れて見入ってしまっていた。
菜穂が身体を曲げて、俺と美津子のほうにやってきた。
「少し・・・お腹が痛いんです・・。」
「菜穂ちゃん、いいわよ、無理しないで、もう今日は休んで。」
美津子。
「じゃぁ、薬、出してやるよ、ちょっと来な」
私は、菜穂にあわせて食堂を出た。
食堂を出てから菜穂の部屋まで、しばらく歩く。その間2人とも無言だった。
菜穂の部屋に入る。高校のころ、初めて彼女の部屋に入ったときのような感覚が20数年ぶりに蘇った。まったく、お笑い。菜穂は、いきなり抱きついてきた。長いキスから始まった。部屋の明かりを消した。
コメント
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コメント (1)
これ懐かしいですね。
もっと続きがあって旦那視点でSEX中の奥さんと対面するシーンまで作者が書いていましたが、その後すぐにサイトごと消滅してしまいました。
あとこの作品とほぼ同じ文章表現の作品に「体験告白、嬲り犯される心」があります。
この作品の方が古いオリジナルで「体験告白、嬲り犯される心」の方がパクリの盗作です。