倒錯の夏
第11章 三日目・8月8日 疑惑
その日の仕事は美津子にとって、拷問以外の何物でもなかった。
早朝の出来事のあと、美津子は身体中をくまなく磨き上げた。もちろん、体内の奥の方まで徹底的に清めた、つもりだった。
しかし、朝食の準備をしている今、時々彼女の背中を悪寒が襲っていた。
完全に排除したはずの忌まわしい精液は、彼女の身体の裂け目から忘れた頃に何度も漏れ出で、太腿にナメクジの這い跡のような染みを作っていた。
まもなく、美津子は、自分の中に体液を分泌したかもしれない子供らのために、かいがいしく賄いを始めるのだった。
もちろん、それは、美津子の行き過ぎた妄想にしか過ぎないのかもしれなかった。
可能性からいうと、子供達より、昨夜飲み屋にいた男達にレイプされる方が十分現実的である。
その後見た夢が子供達を犯人に仕立て上げているのだろう。美津子は冷静になってから考え、そう結論した。
だが、今となっては自分を犯した犯人を見つけることは困難で、しかもあまり意味の無いことだった。それを自覚していること自体が、美津子にとっては余計に屈辱だった。
そのため、唯一確実な証人になりうる菜穂を思わず問い詰めてしまったのも無理からぬことであった。
「菜穂ちゃん、昨日、私に、何があったの・・・?」
「・・・・?」 菜穂の表情には純粋な空白があった。
・・・ひょっとして、本当に、知らないの?
「ねぇ、お願い。最後にあのお酒を飲んでから、何があったか、教えて頂戴?」
抑えられない美津子の語気に、菜穂はやや圧倒されかけていた。
「え・・・?な、なにか、あったん、です、か・・・・?」
「・・・・!ほんとに、何も知らないの!?ね、ねぇ!」
「え・・何を・・・あ、美津子さん、お酒飲んだ後、私と一緒に小村さんに送ってもらったんじゃ・・・・・」
「小村・・さん・・?」
「ハイ。昨日、後ろのボックスにいたの、小村さんだったでしょ?店を出るときに初めて気付いたけど・・・」
「そ、そして、その後は?」
「え、真っ直ぐ、ここに・・・。な、何かあったんですか?」
「・・・・いえ、なんでも・・ちょっと気になって」
「悪い夢・・・見ちゃったんですか?わたしも、慣れない事するとよくあります・・・。心配ないですよ。私、美津子さんが独りで家に入るとこまで見届けてますから」
「そ、そう。ごめんね・・」
美津子は菜穂に、自分の淫らな妄想を覗かれたような気がしてきて、それ以上の問いかけをやめてしまった。
”じゃあ、あんなにいっぱい、私の中に出したのは誰?”
まるで、夫や、小村や、子供達を含めて、彼女の周囲の男たちすべてに身体を弄ばれたような錯覚に陥り、美津子は自分の両肩を抱いて縮こまった。
コメント
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コメント (1)
これ懐かしいですね。
もっと続きがあって旦那視点でSEX中の奥さんと対面するシーンまで作者が書いていましたが、その後すぐにサイトごと消滅してしまいました。
あとこの作品とほぼ同じ文章表現の作品に「体験告白、嬲り犯される心」があります。
この作品の方が古いオリジナルで「体験告白、嬲り犯される心」の方がパクリの盗作です。