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蒼きハイエナたちの時代 I

―― 蒼きハイエナたちの時代 64~68 ――

次の日の1時限目。村島が世界史の授業を受けていると、携帯電話にメールが入った。
木山からだった。内容は、北村光枝が学校に来ていないということだった。
授業が終わるや、4人はテラスに集まった。
「なんだよ、楽しみにしてたのによ」
下野が後者の屋上から下りてきている排水パイプを蹴った。
「携帯鳴らしたけど、ぜんぜん出ないんだよ」
1時限目に光枝の授業を受ける予定だった木山が言った。
「マジ? って感じだね」
ふだんおとなしい谷原も落胆した様子でつぶやいた。
「だよなー、俺達だけ、してないもんなー」
村島は谷原の肩を抱いた。表向きは、光枝とセックスできたのは木山と下野だけということになっている。
しかし、村島は昨日、他の3人に抜け駆けして光枝を独占し、したい放題の限りを尽くしていたのだった。
そして、光枝が来ていないと知ったとき、ショックを受けた。自分の昨日の行為が光枝を引きこもらせる原因になったのではと思ったからだった。
「ビビったかな」
下野が心配そうな顔つきで言った。
「でも、もう若くないんだから、こんなことぐらいでビビんないっしょ」
村島が自分の不安をかき消すように言った。
「見舞いに行こうぜ」
唐突に木山が言った。他の3人は顔を見合わせた。
「見舞いって、どこに?」
下野が聞いた。
「どこって、自宅に決まってんだろ」
木山がうざったそうに言った。
「いつ?」
村島が聞くと木山は「今から。俺は腹痛いって帰ることにするから、お前らは、うまい理由つけて外出届出して」と答えた。
既に、“指揮官”の頭の中では、作戦計画が出来上がっているようだった。
「やばくないか? 家に押し掛けるとかさ」
「ばれたらどうするよ」
「怪しまれないかな、外出届けっていっても」
そんな3人の不安は、木山の「大丈夫、まかせとけって」の一言で封じ込められた。

4人の「脱出計画」はうまくいった。
ふだんから素行に問題のなかった彼らゆえに、教師たちに不審がられることもなかったのだろう。

4人は、電車で4つ目のその駅で降りた。光枝の住所は木山が調べていた。
通行人に尋ねながら歩いていくと、閑静な住宅街に建つ一戸建てのその家に着いた。
木彫りの表札には「北村」と書いてある。
木山がインタホンを鳴らした。しばらくして、応対の声がした。光枝の声だった。
「木山っす」
木山がおどけたような声で言った。すぐに玄関のドアが開き、光枝が顔だけ出してきた。狼狽した様子で、顔色は青ざめていた。
「どうしたの?」
消え入りそうな声で光枝は言った。
「先生が休んだって聞いたから見舞いに来たわけ」
木山が訳有りな笑みを浮かべて言った。
「困るの……。帰りなさい……」
光枝は困惑の表情で言った。
「そんな、せっかく心配して来たのに、そりゃないよ」
木山がわざと大げさに嘆いてみせた。
「帰って……お願いだから」
相変わらず光枝は顔だけ覗かせていった。
「でも、先生、具合わるくなさそうじゃん」
「それは……そうよ……」
光枝は曖昧に言葉を濁した。
「先生、中に入れてくんなきゃ、ここで騒ぎますよ、『僕たちは、淫乱な北村先生に誘惑されてセックスしました。その時の写真もあります』ってね」。木山が“切り札”を出した。
「やめて……息子がいるの……」
光枝は弱々しくつぶやいた。
「えっ!? なんで!? きょう、学校は?」
木山が目を丸くして言った。
「体調が悪いのは、息子なの。40度の熱が出て……だから、帰って……お願いだから」
光枝は絞り出すように言った。
「マジ? それ、すげぇ」
木山は興奮した様子で返した。
「だったらなおさら、中に入れてって」
木山はドアの隙間に足を入れ、強引に玄関の中に入った。光枝は2階へ至る階段の前に立ちはだかった。
木山が2階を指さして、「いるの?」と聞くと、光枝はせっぱ詰まった表情で頷いた。
光枝は、仕方なしに玄関脇の部屋のドアを開け、そこに教え子たちを入れた。

そこは洋風の応接間だった。洒落たサイドボードに洋酒の類が並び、ピアノやシャンデリア、壁にかかった抽象画が豪奢な雰囲気を醸し出していた。
4人はフカフカのソファーにデンと腰を下ろした。光枝はといえば、ドアを背にして、なすすべもなく立ちつくしている。
「先生、心配しないで。もし、息子に見られても、俺ら、落ちこぼれっていう設定で、先生に勉強教わりに来たということにすればいいからさ」
木山が悪びれることもなく言った。
「そんなのおかしい……お願いだから、早く帰ってほしいの……困るの……」
光枝は教え子たちに哀願した。

「これから、子供を病院に連れていかなきゃならないの。だから、これで……」
光枝はシックなエプロンを外しながら言った。
「あ、そう。いいよ、行ってきて。俺達、留守番してるからさ」
木山はソファーにふんぞり返って言った。
光枝はその場にしばらく立ちつくしていたが、あきらめたように部屋のドアを開けた。
そして、「お願いだから、静かにしておいて。本当に。大変なことになるから」と言い残すと出ていった。
30分ほどして、階段を下りてくる足音がした。光枝の息子らしかった。
一昨日、光枝が告白したところによれば、彼らより1学年上の3年生になる次男であろう。ちなみに2人兄弟で、兄のほうは大学生で一人暮らしをしているとのことだった。
玄関からゴホンゴホンとセキが聞こえた。確かに息子は風邪を引いているようだった。4人は、壁1枚隔てたその部屋で息を殺していた。
玄関のドアが閉まり、施錠がされた。そして、母子はガレージに停めてある車に乗り込み、出掛けていった。

「なんか、ワクワクするなー」
下野がテーブルに足を乗せて言った。
「先生の息子にバレたらヤバいよね」
谷原はやや緊張した面もちだ。
「大丈夫だよ、勉強教わりに来たってことでさ。いざとなったら、俺たちは4人、相手は1人」
木山が傲然と言った。
「その1人が、プロレスラーみたく、すんげぇガタイのいいヤツだったらどうするんの」と村山が言うと、皆が笑った。
「腹へったな」
木山が高校生らしからぬ、出っ張った腹をさすった。時計は既に正午を指そうとしていた。
4人は応接間を出て、家内を“探検”することにした。廊下を進むと、すぐに広々としたリビングダイニングがあった。
きちんと片づけられており、光枝の作品だろうか、壁の至る所に、花や風景を模した手芸作品が飾られてある。
そばの台所に入ると、それぞれ思い思いに、戸棚や冷蔵庫を開けて物色した。
それぞれ、クロワッサンやチーズ、ハムなどをつかむと、その場で食らい始めた。
更にリビングの横には、小部屋があって、パソコンや本棚が置いてあった。
「いいとこに住んでるなぁ」
生まれてこの方、狭い団地住まいの下野が羨ましそうに言った。
「だって、ダンナって、商社だろ? 金持ちなんだよ」
木山がクロワッサンを紙パックのオレンジジュースで流し込みながら言った。

その生活の空間の匂いを感じることによって、彼らは、国語教師・北村光枝をより一層、身近に感じ始めた。

ぞろぞろと彼らは北村光枝の家の中を巡った。
木山が先頭になって、入ったのは脱衣場。“指揮官”は、洗濯機の脇の脱衣カゴを見つけたものの、既に目的の「ブツ」は洗濯されていたようだった。
「なんだ、ざんねん」。木山はきびすを返すと、廊下に出て、階段を昇り始めた。

階段を上がり切ると、左手の奥まった部屋があった。
木山がドアを開けると、大きなダブルベッドが部屋を占めていた。シーツはめくれ上がっており、ベッドの上には、光枝のものであろう、
薄黄緑色のパジャマが放置されていた。木山はそれを手に取り、しばし匂いを嗅いだ。
「ここで、ダンナとヤってんのかな」。下野がベッドに上を撫でた。
木山が、重厚なデザインのタンスの引き出しを上から開け始めた。そして、素っ頓狂な声をあげた。
「あったー!」
そこには、光枝のパンティー、ガードル、ブラジャーなどの下着類が所狭しと詰め込まれてあったのだ。
皆が群がり、それぞれ手に取り始めた。
どれもこれも、派手なものはなく、白かベージュの“オバサンもの”ばかりだった。
しかし、それがかえって生活感を醸していて、彼らを興奮させた。
小さくたたまれたパンティーをほぐして見る。「L」サイズの表示。皆、納得した。
パンティの中には、股間の部分がうっすらとシミになっているものも少なくなかった。
教壇の上では、澄ましているくせに、こんなところにシミつけちゃって……。皆、同じ様な感慨に耽っていた。
木山がパンティーを一つ、ポケットにねじ込むと、我も我もと他も続いた。
「バイブとかないかな」
村島はタンスをくまなく探した。しかし、それはなかった。
その代わりに、1ダースの箱に2、3個しか残っていないコンドームが見つかり、皆をうならせた。
その部屋の向かい側の部屋には、勉強机や本棚が置いてあったが、使われているような形跡はなかった。
おそらく、一人暮らしをしている長男の使っていた部屋のようだった。
そして、その右隣の部屋が次男のものらしかった。
カーテンは締め切りで、風邪の時に胸に塗る薬の匂いと、体臭の混じったような、むせるような匂いが立ちこめていた。
壁には大学名とともに「必勝」「絶対合格」などと書かれた紙がベタベタ貼られてある。
本棚には、本やビデオやCDなどが詰め込まれてあった。どこにでもある高校生の男子の部屋の光景だった。
「ねぇねぇねぇ、これ、見ろよ」
興奮した様子で下野が声をあげた。他の3人が見ると、下野は一冊の雑誌を持っていた。
表紙のタイトルは「熟女通信」とあり、40代とおぼしき熟女が意味ありげな笑みを浮かべている。
「それ、どこにあったの」
木山が呆気にとられて言った。

「ここだよ」
下野はベッドの下を指した。
皆が身をかがめてそこを覗き込んだ。
すると、あるわあるわ、何冊、いや数十冊もの、熟女モノの雑誌の数々が。
「アイツ、俺らと同じ趣味ってこと?」
木山がニヤニヤしながら言った。
「けっこういるんだなぁ」
最近になって熟女の魅力に目覚めたばかりの下野がシミジミ言った。
それらの雑誌の中には、ただのヌードが載ったものから、激しいカラミが展開されているものまであった。
「うえっ、これ、なんだよぉ!」
村島が叫んだ。村島が手にした雑誌のページには、精液と思われる液体がべっとりと付着し、生乾きの状態になっていたのだ。
「栗の木くせぇ」。
村島は、指先でつまんでそのページを皆に見せた。
それは、40代がらみの熟女がスカートをまくり上げられ、20代前半くらいの若い男に後ろからハメられて、よがっている写真だった。
「うおっ、すげぇ、それって、北村先生に似てない?」
木山がうなった。
確かに、色白でぽっちゃりしたそのモデルは、おばさん教師・北村光枝を何となく彷彿とさせた。
「まさか、カーチャンをネタにオナってんじゃねえだろうな、息子」
下野が言った。
「ありえないとは言えないね」
村島が興奮しながら言った。
「なんか、おもしろい展開になってきたぞ」
木山がはしゃいだ。
「こっちにもあるよ」
本棚のほうでゴソゴソやっていた谷原が言った。
そこには、本の後ろにビデオが隠されていた。そして、それらもほとんどが熟女モノだった。
「なんだよ、さすが、隠し所を知ってるよ、タニ。自分もおんなじとこに隠してんだもんな」
木山がからかった。
4人は、その後しばらく、憧れの熟女教師の息子の部屋をあさった。

 

 

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