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古井戸の呪い

(8)

「ハァッ、ハアアッ!」
転がり落ちるように山を駆け下りる。
途中で幾度も体をぶつけたが、そんなことにかまっていられない。
深夜の公園。そこに答えがあるのならば。
速度を緩めるわけにはいかなかった。
「ううおおっ!」

智樹の住む街にある小さな市民公園。
昼間以上に人気の無いそこで、事は展開していた。
降りしきる雨の中、
向かい合う男と女。
恫喝するは女。
受け止めるは男。
修羅場がそこにあった。

(まずい!)
いきなりな場面に遭遇した智樹は、とっさに近くにあったベンチに身を隠す。
ここならば、向こうからは自分の姿を窺うことは出来ない。
智樹は座る位置を調整し、ことの成り行きを見守った。

「ながピーどうしてっ…! どうして私じゃ駄目なの・・・?」
ピンク色の傘の柄を握り締め、激しく男を攻め立てる女。
派手な原色の赤の服が、その体のラインを大胆に際立たせる。
髪型も化粧も違っていたが、女は紛れも無く香坂由香里だった。
「駄目っていうか…」
ばつが悪そうにぼりぼりと頭を掻く男。
冴えない無精髭に、七三にぴっちりと分けられた髪。
男は智樹のクラス担任、名賀健一だった。

(そんな馬鹿な!)
智樹は愕然とした。それもその筈、
「由香里も知っているだろう? 俺、婚約したんだ」
そうだ。
確か名賀健一は、少し前に副担の小阪尚美とくっつけて「駆逐」した筈だ。
なのに何故…

「でも… 好きなの。忘れることなんて…出来ない」
そう呟き、由香里は名賀健一の方へとに近づく。
そして背伸び。至近距離。
これから何をするのかを、一瞬で悟らせる配置だ。
智樹専用の筈の、その領域が侵食されていく。
「御願い…」
由香里が、その涙で濡れた瞳をそっと閉じた。

(好き?キス?俺以外の男と!?)
ぶちぶちと智樹は足元の雑草を引き千切る。
投げつけるのに手ごろな石は無いかと探すも徒労に終わった。

やれやれ、と苦笑する名賀健一。
そして、由香里の肩に手をかける。
一瞬ビクッとなるも、すぐにトロンとした目で由香里は見つめ返す。

(やめ、やめろおおおお!!)
がりがりとベンチの背もたれを掻き毟る。
射る位に名賀健一を凝視。でも目からは弾丸も光線も出るわけも無く。

そして二人の距離は0になった。

「えっ…」
驚く由香里。
名賀健一は、由香里のおでこにそっと口付け、すぐに離れた。
「…ごめんな。もう口にはしてやれない…」
このキスを以って、二人の関係は終わったのだった。
「もう遅い。タクシーを呼ぶから、それで帰りなさい」
そう言って、名賀健一は携帯でタクシーを呼んだ。
「……」
由香里は、俯いたままさめざめと泣いている。
黙って名賀健一が差し出したハンカチも、由香里は受け取らなかった。
「いいよ。涙もながピーを忘れたいって言ってるし」
「そう… じゃ、俺は帰るからな」
あっさりと引き下がり、名賀健一は公園を去っていった。

独りになった由香里が、とぼとぼと智樹の方へとやってきた。
そして智樹が隠れているベンチに腰掛ける。
瞬間、仄かに香る香水と女の汗とが混ざり合った芳香。
無意識のうちに智樹の鼻がそれを逃さず嗅ぎ捕らえる。
こんな時にどうして俺は…と智樹は歯噛みした。
「どうして…こうなっちゃうんだろう」
一人呟く由香里。智樹は黙って聴き耳をたてる。
「何人…好きになれば終わるの? 何人に振られたら私は気が済むの?」
何人。
複数の男…
呪い(まじない)の正しい方法に辿り着いた複数の男と…
由香里は「このような」関係を持っていた。
鈍器で殴られたような衝撃が智樹を襲う。
が、すぐにある疑問が浮かび上がった。
(呪いの上書きに失敗したのか?)
このことであった。
由香里に呪いをかけた男達を、古井戸の力で他の女と恋仲にする「呪いの上書」。
藤沢圭にも、今の名賀健一にも確かに効果はあったはず。
一体どこに問題があったというのか。

「智樹クン…ごめんなさい、ごめんなさい…」
(由香里…っ!)
自分の名を呟く由香里。今すぐに出て行って抱きしめてやりたい。
そして一言、

『俺が一番、お前のこと好きなんだぜ』

そう言えたら…

「私、もう駄目… いくら振られても、好きな気持ちが消えないの。
 こんなんじゃ、いずれ智樹クンも私のこと、嫌いになっちゃうよね…」
自嘲気味に笑う由香里のその言葉を聞き、智樹はハッとなった。

『井戸に身を投げた夜鷹の霊魂が、両思いにしてくれるんです』

インタビューでの真二の言葉。
『両思い』
すなわち相思相愛のこと。
恋人同士になれた男と女。
だが男は他の女とともに立ち去ってしまう。
残されるは…想い半ばで打ち捨てられた女だけ。

そうなのだ。
智樹が行った「上書き」は、あくまで「男」に対してだけだったのだ。
他の男の呪いで由香里は幾つもの恋をし、そして智樹の上書きで由香里は幾つもの失恋を味わった。
それは呪いによって演出される、強制的な出会いと一方的な破局。
そして夜鷹の霊魂は由香里にその想いを忘れることを決して許さない。
何故なら、呪いは古井戸の底でまだ続いているのだから。
幾つもの『片思い』を抱えた由香里の心は、もはや壊れる寸前であった。

露に額を穿たれ、智樹は目覚めた。
朝の公園。ベンチ裏。どうやらあのまま気絶してしまったらしい。
「うぅ…」
よろよろと体を起こし、辺りを見回す。。
由香里の姿は既になかった。あの後タクシーが迎えに来たのだろう。
「すまない…由香里…すまない」
ここにはいない由香里に智樹は謝罪する。自分がしでかした事の何と愚かしいことか。
「誰かに心奪われていたとしてもいい。仮に抱かれていたとしてもいい。
 俺だけは、俺だけはお前のこと、振ったりはしないからな…」
智樹の決意。呪い(まじない)に魅入られた愚かな男の愚かな誠意。
だがそれももう由香里には届かないことに智樹は気付いていない。
智樹が倒れていた場所の真上。そこには、昨日由香里が携えていたピンク色の傘が開かれていた…

その日以降、由香里は学校に来なくなった。
家の方にも行ってはみたが、既に由香里の家は売家になっていた。
恋人を失い、半分死人の様相で智樹は日々を過ごす。
朝起きては由香里と待ち合わせをしたいつもの場所を確認し、落胆する。
昼は由香里の弁当が到着するのを待って何も食べない。
そして夜は、見知らぬ男と由香里の情事を想像し、それを自分に置き換え自慰に耽る。
そんな生活を2ヶ月位続けただろうある日、智樹宛てに一通の手紙が送られてきた。
差出人不明。消印も無い。どうやら智樹の家のポストに直接投函されたものらしい。
「…なんだろう」
怪訝に思いながらも、智樹は手紙の封を解いた。

『Menber’s Club 甘露檸檬(れもねぃど) 特別無料招待券』

見知らぬ店。チケットからは何の店かは窺うことはできない。
が、智樹は気晴らしになればと、その店に足を運ぶことにした。
チケットの日付は今日。いまから行けば時間も十分だ。
智樹はさっそく身支度を始めた。

智樹の家から私鉄で30分。その駅前繁華街。
スナックやキャバクラやらの派手なネオンの店舗が立ち並ぶ狭間にその店はあった。
『Menber’s Club 甘露檸檬(れもねぃど)』
ともすれば周りの極彩色に埋れてしまいそうな地味な外観だったが、
看板のささやかに光るネオンが、そこが夜の店であることを物語っていた。
「こんな店、知らないぞ」
智樹は改めて招待状を見直す。
「送る家を間違えたんじゃないのか?」
そう考えるも、チケット裏にはしっかりと智樹の名が記されている。
店の前で入るか否か悩む智樹。
その横を、この店の『商品』であろう女がすれ違い、軽く肩が当たった。
「あ、失礼」
「いえ」
反射的に謝る智樹。女のほうも軽く会釈し、そのまま店の扉を開けた。
そして女が店に入る瞬間、智樹はその顔を見てしまったのだ。
(お、緒美奈裕子!?)
一瞬の邂逅で確証は無い。だが、智樹にはその女の顔があの緒美奈裕子に見えた。
その真偽を確かめる。智樹は店に入る口実を得たのだった。

「いらっしゃいませ」
スーツ姿の店員が慇懃に礼をする。
店の中は意外と簡素な造りであった。
物珍しげにきょろきょろと見回す智樹を店員が促す。
「今日はご指名ですか?」
いきなりの店員の攻撃にあたふたとする智樹。
その懐から、礼の招待券が落ちた。
「予約番号0171…承っております。どうぞこちらに…」
チケットを拾い上げた店員が、智樹を店の奥へと誘う。
宜しければ、と店員に差し出されたマルボロを、智樹は言われるまま受け取った。
(何だ?何がどうなっているんだ?)
半ば自動的に事が進む中、智樹は店に入った当初の目的を忘れてしまっていた。

個室は思いのほか広かった。
真ん中にベッドが置かれ、部屋の隅には小物入れが見える。
ベッドの下には脱衣籠が置いてあり、壁には電話が設置されていた。
(マッサージとかカイロプラティックとか、そんな感じの部屋だな)
とりあえず、智樹はベッドに腰掛け、受付で買ったマルボロに火をつけた。
「げほ、げっほっ!!」
咳き込む。吸ったこと無い智樹には当然の結果だった。
「慣れないことはしちゃ駄目だな…」
ひとしきり咳き込み、落ち着いたと思った瞬間、個室のドアが開いた。

「いらっしゃいませ!」

智樹は顔を上げた。
お辞儀をする、その女の方を見やる。

「初めまして」

へそが丸見えになる位の短いセーラー服のブラウス。
綺麗な足を惜しげも無く晒す、超ミニスカート。
ほんのり化粧をしているものの、それを露骨に感じさせない。

「ユカリです。今日は指名してくれてありがとう!」

ショートヘアがさらりと揺らし、女が顔を上げる。
そこに、笑顔の由香里が、いた。

「ゆ、由香里…」
智樹は思わず涙が出そうになった。最早会えないと思っていた由香里が、
今、自分に向かって微笑んでいる。その事実にただ感動していた。
そして今二人がどこにいるのかも、その瞬間智樹は忘れてしまっていた。
だが、ユカリの一言で時間が動き出す。智樹以外の時間が。
「先に、シャワーを浴びましょう」
ユカリはしずしずと歩み寄り、智樹の服に手をかける。
「もう外は寒いですよねー。 あ、服はここに掛けときますね」
何が起きている?彫像のように立ち尽くす智樹。脳がまだ、正常に機能していない。
「ユカリが全部脱がせちゃいますからね」
固まったままの智樹の服を、テキパキと脱がせるユカリ。ブリーフ一枚になった時点で一気に智樹は覚醒した。
「あぁ、あのえっと!」
智樹の動揺に構わず、ユカリは一気にブリーフをずり下げる。
晒された智樹のモノは少し皮が被っていた。
「クスッ、気にしなくてもいいのに。これ位、普通ですよ?」
(なにについて普通?大きさ?形?長さか?それとも包茎具合か?)
混乱。智樹を混乱が支配する。羞恥も自尊も愛情も絶望も、ないまぜにしての混乱…だった。
「さ、行きましょ」
智樹の腰にタオルを巻いた後、ユカリが左腕を智樹の腕に絡めた。そして右手で慣れた手つきで電話を掛ける。
「お客さん、シャワー入ります」

『お客さん』
この一言で智樹は遅すぎる理解をした。
決して満たされぬ由香里を癒す、彼女自身が見つけた方法。

ああそうか
彼女はここで
『自分を選んでくれる男』を愛しているのだ。

ユカリに促され、曲がりくねった廊下の先にあるシャワー室に入る。
ユカリはセーラー服のままだ。
「はいうがい薬。お口をゆすいでくださいね」
言われた通りに口をゆすぐ智樹。その間にユカリは智樹をスポンジで洗い始める。
人に体を洗われる感覚にしばし酔う。そこで智樹はやっと口を開いた。
「ユカリ…ちゃんはここ長いの?」
お決まりの台詞だ。しかもあまりよろしくない切り出し。
「えーとぉ、2ヶ月くらいかな。まだまだ新人ですよ?」
さらりと答えるユカリ。客のあしらいも慣れたものだ。
「へ、へぇ…そうだね。まだまだ新人うっ…」
いきなりユカリの泡塗れの手に股間を擦られ、智樹は思わずうめいた。
「あん、駄目っ、暴れないで。ここでイッらもったいないですよ」
正直果てそうだったが、何とか智樹は耐えた。シャワーで泡を流され、体を拭かれる。
「じゃ、お部屋にもどりましょ」
個室へ戻る時も、ユカリは腕を絡めてきた。

再び個室に戻った智樹とユカリ。智樹はどうしていいか分からずにいた。
「そろそろ始めましょうか」
「あ、あの、俺…こんな店初めてで、そのどうしていいか…」
情けなくもあったが事実は事実。智樹は正直にそれを告白した。
するとユカリは優しく微笑み、プレイの説明をし出した。
「お客さんのコースだとぉ…『萌え萌えイメージプレイ』からです。
これは私に感情移入してもらう為のお芝居のこと。あ、ここでのお触りは無しですからね」
智樹には理解不能だった。が、構わずユカリは続けた。聞けば分かる、ということらしい。
「ありがちな所でお客さんは学生。ユカリはそのクラスメイト兼恋人ってとこでどうかな?」
奇しくも由香里の指定したシチュエーションは恋人だった時の二人と同じものだった。
これならさほど苦労せずに演じれるだろう。
智樹は狂い始めた思考でそう判断し、提案に了解した。

 

~萌え萌えイメージプレイ進行中~

「永沢クン…やっと二人きりになれたね」
よりそう由香里。
「二人っきりの時は名前で呼ぶ。そう言ったろ」
すかさず智樹が注意する。いつかあった風景かもしれない。
「ごめん。まだ慣れなくって。癖かな」
「そうだな。由香里の悪い癖だ」
自分を軽く小突き、はにかむ由香里。これもいつかあった風景か…?
「ね、私達、ずっとこのままでいられる?」
「どうかな…みんなお前のこと、好きみたいだからな…」
由香里の髪を撫でながら、智樹の心は遥か彼方に飛んでいた。
「でも…」
そして、あの時言えなかった言葉を紡ぐ。万感の想いを込めて…

「俺が一番、お前のこと好きなんだぜ」

どちらともなく抱き合う。由香里の柔らかさを堪能し、髪の毛のいい匂いで深呼吸する。
「いいかい…?」
「…うん」
智樹はこの瞬間酔っていた。酔って、酔って、『ここがどこなのか』をまたもや忘れていた。

~萌え萌えイメージプレイ終了~

「お客さん演技上手すぎ~。結構グッっときたよ」
するりと、ユカリが体をかわす。智樹の腕が空を切り、よろめきかかった。
「じゃ、ローション作ってきますので、仰向けに寝ていてくださいね」
智樹は呆然としつつも、素直にベッドに体を預けた。
智樹の股間にタオルをかけたユカリは、部屋を薄明かりにし、そそくさと個室を出ていった。

待つこと数分。智樹は不安と奇妙な期待を抱きつつ、その時を待った。
「お・ま・た・せ」
ユカリが洗面器を持って帰ってきた。洗面器からは湯気がたっている。
「じゃ、そのまま楽にしていてくださいね」
洗面器を小物入れの上に置き、ユカリは智樹の股間のタオルを外す。久々の外気に股間が縮こまる。
ベッド横に移動したユカリは、ゆっくりした動きで智樹の腰をまたぎ、その上で中腰になった。
異常に短いスカートの裾からパンティが…見え隠れしている。
「クスッ」
智樹の視線に気付いたのか、微笑むユカリ。そして、おもむろにスカートをするり、と脱いだ。
続けてブラウスを脱ぎ去る。最後のブラジャーは…焦らすように外した。
仰向けの姿勢から見るユカリのトップレス…シンプルなリボンをあしらった純白のパンティから上へと
奥まり、そしてその形良いバストの辺りでこちらに迫る、その線…
迫力だった。小さくて可愛い由香里の体とは、とても思えなかった。
「じゃ、まずはご挨拶から」
そう言って中腰の姿勢から前かがみになるユカリ。丁度智樹の目の前に、二つのバストが晒される格好だ。
「さ、どうぞ」
ユカリに促され、恐る恐るその魅惑の膨らみに手を伸ばす智樹。
触れる。揉む。埋める… 何て、感触…!
「…柔らかい…」
「えへへ、ありがと。…吸ったり、舐めたりとかも、いいんだよ…」
許可がおり、智樹はすかさず乳首にむしゃぶりついた。許可がないと何もできない。してはいけない。
風俗初心者の智樹は、そんな男に成り下がっていた。

「ん…ふぅ…あぁん」
智樹は夢中で顔面に押し付けられるユカリのバストを弄ぶ。
時折漏れる、ユカリの切なげな声が行為に拍車をかける。
永遠に続いて欲しいと思った時間…でも終わりはすぐに訪れた。
「んんっ…時間…無くなっちゃうから、ご挨拶はここまで…ね」
ユカリの胸が智樹の顔から離れていく。乳首と智樹の舌を繋ぐ唾液の線がつぅ、と垂れる。
智樹の顔はべとべとだった。
再び中腰になったユカリ。そして今度は例の洗面器から何かをすくい出す。
「あ…それ何?」
「ん…ローションですよ。これをこうして…」
ローションを手に取り、智樹の胸に、腹にぬりたくる。それは少し暖かかった。
「じゃ…行きますよぉ」
ユカリはクルッと180度向きを変える。そして腰を滑らせ、自分の股間を智樹の顔面の方へとずらした。
いわゆる69の体勢だ。ユカリのローションに濡れたあそこが、パンティごしに智樹の目前に配される。
「な、何を…うううっ!」
智樹の股間…既にギンギンにそそり立っていたそれが、とてつもなく柔らかいモノにつつまれた。
それは、さっきまで智樹が弄んでいたユカリのバストだった。
ぐにぐにと刺激される。思わず智樹は呻いた。8の時を描く動き、迫っては引いていくユカリの股間と
そこから匂い立つ芳香は、智樹に異次元の快楽を与え続ける。
「う…ぐぁ…」
「いいの…? 気持ちいい? でもまだイッちゃ駄目…」
さらにユカリは体を180度移動させ、元の中腰の位置に戻る。
その直後、上半身を智樹の胸にぴったりと密着させた。
ちょうど騎乗位の体勢から体を前に倒した感じだ。
そして、素早く手にローションを絡ませ、うまい具合に彼女の足の間に位置した智樹の逸物を包む。
いわゆる手コキである。
しかし密着したこの体勢では、ユカリの膣に包まれているかのようだった。
それ程ユカリの動きは巧みで、隙を見せない。

ユカリは手を少し強めに握り、智樹の逸物を1/3位の部分までを包む。
「お客さんに…ユカリの初めてをあげる。このまま…真っ直ぐ突いて…!」
耳元で囁くユカリ。擬似バージン。初めての客へのサービスのつもりらしい。
しかし、その一言で智樹の理性は完全に焼き切れた。
智樹はぐい、と腰を突き出す。その圧力に合わせて、ユカリは少しずつ手の力を緩め、処女喪失を演出する。
「痛っ…入ってくるぅ…お客さんのおチンチン、ユカリの中に入ってくるよぉ…」
切なげに喘ぐユカリに、うんうん、とうわ言のように頷く智樹。その目は歓喜の涙が溢れていた。
やがて、ユカリの手に智樹のものがすっぽり収まった。しばし息を整えるフリをするユカリ。
「もう…大丈夫。…動いて、いいよ」
その言葉を合図に、智樹は腰を降り始めた。ユカリの手コキ目掛けて…
ユカリはクス、と微笑み、智樹の腰の動きに合わせて、手コキを微調整する。
「あっ…はぁ…っ…いい、いいよ、おチンチン気持ちいいよぉ…」
嬌声を上げるユカリ。勿論演技だ。しかし智樹は気付かない。
「ああ、ユカリ… 由香里…」
智樹はずんずんと腰を振り、夢中でユカリの感触を堪能する。
反対にユカリの方は冷静で、喘ぐ演技をしつつも、手の位置、握力、角度に変化をつけ、執拗に擦リ上げる。
「あん… あん… もっとぉ…もっと突いて! もっとユカリを感じてっ!」
端から見れば、さぞかし滑稽極まりない絵図なのだろう。
だが、これはSEXだ。
智樹と「ユカリ」との間に、限られた時間の中でのみ許される最大級の愛の交換。
たとえ偽りの契りだとしても…今、智樹は至福の中にいるのだ。

「あぅっ…はんっ…ひうっ… んん?」
智樹の逸物がびくびくと震え出したことにユカリは気付いた。
「…お客さん…もう…イキそう?」
慈愛の表情で智樹に質問し、射精のタイミングをうかがう。
「も…もう限界…イく…イク!」
智樹はそれだけ言うと、狂ったように腰を動かし出した。
「イっていい、イっていいよ、イきたい時にイっていいから。ユカリの中で気持ちよくイってっ!」
手の動きを早めるユカリ。
手コキに叩きつける智樹の腰がユカリの体をぐいぐいと持ち上げる。
そして…
ドピュ、ドォピュゥゥゥッッッ!!
弾丸のように飛び出す智樹の精液。そしてそれは、ユカリのお腹やへそにと幾つもの線を描いた。
射精に合わせて、由香里は手の速度を落とす。そして最後の一滴までもを念入りに搾り出だした。
「ユカリの…中に…いーっぱい出せたね…」
ユカリは優しく智樹の頬に口付けをし、その汗だくの体をぎゅっ…と抱きしめる。
最高の快楽の果てに射精した智樹の顔は安らかだった。
最後までユカリを演じきった由香里。
一仕事終えた清々しさに満ちたその笑顔は、紛れも無いプロの風格を湛えていた

 

(9)

由香里。
大好きな由香里。
ちっちゃくて、可愛い由香里。
でも、あんなにエッチが好きとは、思わなかったな。
俺も負けていられない。
いつか由香里を最高に気持ちよくさせてやれるよう、頑張らねば。

<10月14日>
また俺は仕事中の由香里を覗きにいった。
もちろん客としてだ。
そうしないと、仕事場の方々に気を遣わせてしまうからな。
それに少しでも売り上げに貢献すれば、由香里も喜ぶだろうし。
…ところで由香里の勤めている店って何の店なんだ?

<10月17日>
今日は由香里と色々な話をした。
聞けば緒美奈裕子も由香里と同じ理由でこの店で働いているとか。
あまり興味の無い話だったが、由香里は仲間がいて嬉しいらしい。
今日も由香里は仕事中にも関わらず、俺の股間を触ってくる。
ばれたらどうする気なんだ。
でもこの気持ち良さには逆らえない。
俺達って変態なのだろうか?

<10月30日>
由香里がマッサージをしてくれると言ってきた。
2時間も待たせたお詫びとのこと。
断る理由など無いので、素直にお願いすることにした。
ぐりぐりと俺のこっている所をピンポイント攻撃。
あまりの気持ち良さに思わず寝てしまったが、由香里は怒らなかった。
で、最後はやはりエッチに移行。
由香里のあそこを初めて舐めさせてもらった。
その後は由香里の可愛い手の中でフィニッシュ。
やはり由香里は仕事中にエッチをするのが好きみたいだ。

<11月8日>
俺はこの日を生涯忘れないだろう。
いつも恒例の仕事中エッチ。
今日も手でされるのかと思いきや、由香里はいきなり俺の逸物を口に含んできた。
フェラチオ…あのがフェラチオをしている!
(どこでこんな事を憶えたんだろう?)
聞いても由香里は教えてくれなかった。
ねぶねぶと卑猥な音。あっさりと俺は陥落してしまう。
でも由香里はすぐに精液をティッシュの中に吐き出した。
できれば飲んで欲しかったが、初フェラチオでそれを要求するもの酷な話だ。
こういうことは少しずつ慣れていけばいいんだからな。

<11月19日>
3時間も待たされた苛立ちにまかせ、俺は日頃の疑問を由香里にぶつけてみた。
どうして仕事中にしかエッチをしてくれないのか?
それ以前に仕事中にしか由香里に会えないのは何故?
由香里はきょとんとしたが、すぐに笑顔に。

「だって、そういうルールだし」

それだけ言って、、由香里は俺にのしかかってきた。
股間をしゃぶって誤魔化す由香里。
どうやら言えない理由があるらしい。
それを聞いてしまうなんて、彼氏失格だな。
それ以前にルールだ。
ルールなら仕方が無い。
反則は退場だそれだけは避けねば。
この話はここまで。
今は由香里の舌技を楽しむことにしよう。

<12月14日>
由香里が転職すると言い出した。
どうやらここでは満足のできる仕事ができないらしい。
高みを目指すのはいいことだ。
自分の彼女ながら誇りに思う。
その日は由香里の転職先を聞き出しただけで帰った。
たまにはエッチをしない日があってもいい。
がっついてると思われたくないし。
店を出た後、貰った名刺を確認する。
「…何故に風呂屋?」
答えは由香里の胸の中だった。

<12月20日>
今日は由香里の新しい職場に行ってみた。
ルールに則って、やはり客として顔を出す。
甘露檸檬の倍近くの金を取られたが、これも由香里に会うためだ。
ここでは由香里専用の部屋があるらしく、早速見せてもらうことに。
その部屋は全体の3/2が風呂場になっていた。
湿気でインテリアが痛まないかな?
ちょっと心配だったが由香里は平気そうだった。
で、やはりここでも由香里とエッチ。
あのマットを使った奴は最高に気持ちよかったな…
由香里は会うたびにどんどんエッチがうまくなる。
きっと愛する俺の為に、なんだろうな。

<12月24日>
今日はクリスマスイブ。
恋人達の日。
だが俺は由香里に会うことができない。
何故なら貯金が底を尽いてしまったからだ。
一人ですごす夜は寂しい。
由香里もこんな気持ちを味わっているのだと思うと激しく胸が痛んだ。
早く割りのいいバイトを探して金を作り、由香里に会いに行かねば。

 

「ふう…」
やっと本日二つ目の穴を塞ぎ終わった。一息つき、ホールを見回す。
「随分と作業が進んだな…」
既に何十枚も掘り返されたタイルを見て、俺は感慨深げに呟いた。
偶然見つけたこの仕事。
もう使わなくなったホール(元は映画館か何かか?)の床タイルを剥がし、深く穴を掘る。
そこへ、訳の分からない何かが入ったドラム缶を入れ、また穴を塞ぐ。その繰り返しだ。
ドラム缶からは時折強烈な刺激臭がしたが、俺は気にしないことにしていた。
「クビにはなりたくないからな」
現にそれを尋ねた何人かは、次の日から現場に顔を見せていない。
キツくて臭い仕事だからこそ割りがいい。当然の話だ。
「よぉ、休憩か?」
同僚のおっさんが声をかけてきた。初日からのつきあいなので気心は知れている仲だ。
「あれ?また剥げたんじゃないですか?」
「うるせぇ。若い者にゃわからねぇ悩みだ」
「そんなことないですよ。俺も最近抜け毛が多くて」
「そうなのか?気をつけろよー。若剥げはモテないぞー」
「大きなお世話ですって」
どちらとも無く笑い合う。職場が楽しいのはいいことだ。
「それにしても、お前よく頑張るよな。何か欲しいものでもあるのか?」
不意におっさんが話しかけてきた。
「……」
昔の俺なら照れてこんなこと言えなかっただろう。でも、今なら胸を張って言える。
人は成長する。かけがえの無い何かを手に入れ、人は強くなるのだ。
少しの間の後、俺はおっさんにはっきりと答えた。

「惚れた女を食わせる為ですよ」

 

<終>

 

 

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