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戦い

戦い 第51回

5月15日(土)の2

妻は口数の少ない私に、腫れ物にでも触る様に接していましたが、私が出掛けようとすると。
「あなた、今頃何処へ行くの?お願いだから一緒にいてください。私が悪かったです。ごめんな
さい。何処にも行かないで。」
私が何かするのでは無いかと思って、心配しているのは分かりますが、今の私には優しい言葉を
掛ける余裕は有りません。
「お前の様に、浮気しに行く訳では無いから心配するな。」
そう言われると妻は何も言えません。
アパートに着くと、野田の部屋にも隣の部屋にも、明かりが点いていました。
インターホンを押すと、ようやく彼が出たので。
「美鈴の亭主だが、妻が大変世話になったそうなので、お礼を言いに来た。ドアを開けてくれ。」
彼は上擦った声で。
「僕は何もしていない。関係ない。帰ってくれ。」
「何もしていなかったら、開けてくれてもいいだろ?とにかく、ここを開けろ。そうか、まあい
い。それなら月曜日に、△△商事にお邪魔する。遅くに悪かったな。」
そう言うと、慌ててドアを開けてくれた彼は、メガネを掛け、いかにも一流企業のエリートサラ
リーマンといった風情でした。玄関先で話そうとする彼を無視して、土足のまま上がって行くと、
テーブルの上に座り。
「妻が色々世話になったそうで、どうしても会ってお礼がしたくてな。すぐにお礼をしようと思
ったのだが、その高そうな眼鏡が割れると困るだろ?メガネを外してくれ。」
「どうして僕が、そんな事をされなくてはいけない?もう帰ってくれ。警察を呼ぶぞ。」
彼は電話の所まで行き、受話器に手を掛けましたが、その時、口では強がっていても、手が震え
ているのが分かりました。
「早く警察に電話しろ。警察に来てもらって何と言う?他所の奥さんに恥ずかしい事を3日もさ
せたら、旦那が押し掛けて来て困っている、とでも言うのか?早く電話しろ。」
彼は受話器から手を放し、私を必死に睨み付けていました。
「そうだな。俺も興奮しすぎた。ここへ来たり会社に押し掛けては、脅迫と言われても仕方が無
い。きちんと弁護士を連れて来るから、またその時に話をしよう。」
「弁護士?僕は何もしていない。ただ隣に行ったら、あんたの奥さんがHな格好でいただけだ。
指1本触れていないから慰謝料も発生しない。脅して無理にさせた訳でも無いから、強制猥褻
も当て嵌まらない。どういう理由で弁護士と会わなければならないか、教えて欲しい。」
「流石エリート。若いのに何でも知っているな。俺もお前を、何の罪に出来るか分からん。罪に
出来たとしても、お前は何も知らずにしていたのだから、民事かも知れない。ただ、女房を笑い
者にされて黙っていられるか?まあ、ここで話していても仕方がない。弁護士を連れてくるから、
6月13日に○○ホテルのロビーで会おう。何時が都合いい?」
「どうしてそれを?それは脅迫じゃないか。そんな所で話したら、みんなに知れる。破談になっ
てしまう。完全な脅迫だ。」
「お前は可笑しな事を言うな。お前は、自分は悪い事は1つもしていないし、自分のした事に非
は無いと思っているのだろ?それならどうしてみんなに知られては困るんだ?悪い事はしてい
ないのに、どうして破談になる?お前の両親にも、奥さんになる人にも、相手の両親にも聞いて
もらおうじゃないか。そこでお前は、他所の奥さんに恥ずかしい格好をさせたけれど、僕は悪く
ないと、はっきり言えばいい。それが脅迫と思うなら訴えろ。脅迫でも名誉毀損でもいいから訴
えろ。受けて立つ。奥さんになる人も、お前がどういう趣味か知っておいた方が、夫婦生活がし
易いのではないのか?」
私が帰ろうとすると、震えが大きくなって泣き出し。
「すみませんでした。許して下さい。お願いします。許して下さい。」
「簡単に謝るな。お前は悪く無いと思っているのだろ?そんな口先だけで謝るな。失礼する。」
彼は走ってきたかと思うと、私の足に縋り付き。
「許して下さい。30万・・・・・・・・30万払います。慰謝料として30万払いますから、
許して下さい。お願いします。」
「お前も想像してみろ。今度結婚する彼女が、同じ目に合ったらどうする?30万貰って満足す
るか?俺の女房も楽しんでいたから仕方が無いと、笑って済ます事が出来るのか?話にならん。」
「すみません。50万出します。お願いします。お願いします。」
「誰が金額の話をした?お前の誠意は金か?お前の謝罪は金か?もういい。13日に会おう。」
「許して下さい。どうやって謝罪すれば良いのか分かりません。教えて下さい。お願いします。
気の済む方法を教えて下さい。」
「そうだな・・・・・・・実は俺も分からん。本当は殺してしまいたい気持ちだが、そこまでは
出来ん。お前が結婚してから俺の前で、奥さんに同じ事をさせれば気が済むかもな。まあ、いつ
になるか分からんが、気が収まる方法が分かったら電話する。携帯の番号を教えてくれ。勤め先
も分かっているから、逃げたり、携帯を代えたりしても無駄だぞ。」
彼は野田に、利用されただけかも知れません。若い男があのような状況の中にいたら、無理も無
い事かも知れません。しかし、妻の事を考えると、そのままにしておく事は出来ませんでした。
私は、もう彼に連絡する気は有りません。彼はこれから結婚式まで、いいえ、結婚してからも、
いつ何を言ってくるのか、何をされるのかビクビクしながら過ごすと思います。

 

戦い 第52回

5月15日(土)の3

彼の部屋を出ると、野田の所へ寄り。
「野田。今日は悪かった。時々発作の様に訳が分からなくなる。自分で何をしているのか、何が
したいのか分からなくなる。もう別れた方がいいのかも知れん。疲れた。」
それだけ言い残し、車で帰途に着きました。野田は、私の精神状態が不安定だと思ったはずです。
やはり真実が知りたくて、野田に何らかの行動を起こして欲しかったのです。
しかし、車を運転していて、どこかで妻を信用したい気持ちが有り、野田だけに行動を興させる
事ばかり考えている事に気付きました。それでは片手落ちで、妻が嘘をついている場合も考え、
妻が行動を起こせるチャンスも与えなければならないと思い、家に着くと。
「美鈴、今から濃い目の化粧をしろ。」
妻が素直に従って化粧をしている間に、2人の夜の為に買い揃えたセクシーな下着の中から、赤
い透けた物を選んで、妻に穿き代える様に言いました。
「1杯呑みたくなった。その格好でビールの用意をして、お酌してくれ。」
「あなた、許して下さい。許して下さい。」
「野田や見ず知らずの男の前では出来ても、俺の前では出来ないか。そうか。」
妻は目に涙を溜めながら、渋々従いました。
「ビールを呑みながら見ていてやるから、あの時と同じポーズをしてくれ。」
妻の目から涙がこぼれました。妻に色々な格好を要求している内に、酔いも手伝ってか、妻では
なくて、淫乱な娼婦でも見ている気分になってしまい、その後口でさせました。
シャワーを浴びてからベッドに寝転ぶと、妻が横に来て私の物を摩って来ます。
「泣いていたのに興奮したのか?」
「違います。・・・・・・・・寂しくて。」
「俺はもう出したから、する気にならん。脅されたにしろ、美鈴は俺の他に野田ともしていて、
ここのところ、俺よりも楽しんでいたから、もういいだろ?」
「ごめんなさい。でも、楽しんでなんかいません。」
「楽しんでいないのに、大きな声を上げて何回も達したのか?美鈴は器用だな。野田の部屋へ何
度も行ったが、隣の部屋の話し声や、物音は何も聞こえない。楽しんでもいないのに、余程大き
な声を出していたんだな。」
「・・・・・・ごめんなさい。」
「それよりも、生理の間は、手や口でさせられていたと言っていたが、土、日は朝から夜まで、
1日中させられていた訳では無いだろ?」
「・・・・・・はい。朝と昼過ぎと夜の3回させられました。」
「どんな格好でさせられた?」
「2日とも、朝、着くなり玄関で・・・・・昼はエプロンをしたままキッチンで・・・・・夜は
ベッドで、上だけ裸にされて・・・・・・・・。」
「他の時間は何をしていた?」
「掃除、洗濯、買い物、食事の用意と後片付け、それと喫茶店にも行きました。」
「それに下の世話までしていた。まるで夫婦じゃないか。買い物は何を?」
「スーパーで食材や、課長の下着なんかを・・・・。」
私の脳裏に、仲の良い夫婦の姿が浮かびました。
「買い物の時、まさか手は繋いでないだろうな?」
「・・・・・・・腕を組まされて・・・・。でも、1日中セックスの相手をさせられるよりは、
精神的に楽でした。」
どちらも嫌ですが、何故か私にはこの方が辛かったです。
「美鈴、警察に行こう。野田の犯罪を立証出来ないかも知れないが、このままで良いのか?悔し
く無いのか?子供達ももう大人だ。仮に知れても、きっと分かってくれる。美鈴の事を蔑んでも、
あいつらに限って、母親を捨てる様な事はしない。」
「あなた、許して。私には出来ません。私に有利な証拠なんて何も無い。例え何らかの罪に出来
ても、子供達に知られてしまう。今回あんな事をさせられていたと知られるだけでも、死ぬより
辛いのに、当然課長は、有利になる昨年の事も話してしまう。子供達はそれを知り、私を軽蔑し
て許してくれない。普通の不倫でも許してもらえないのに、あんな行為を、普通しないような行
為をしていたと知って、私を蔑み、きっと私から生まれた事を後悔する。もう一生会ってはくれ
ない。あなた、許して。ごめんなさい。ごめんなさい。・・・・・・・・子供達だけではなくて、
親戚、会社、近所の人にも知られてしまう。もう私のいる場所は無くなってしまう。生きていら
れなくなってしまう。」
妻の話を聞いていて、レイプされた女性のほとんどが、被害届けを出さないのと同じだと思いま
した。裁判で恥ずかしい事を、事細かに話さなければなりません。その上、配慮はしてくれても
何処からかみんなに知られてしまい、悪い事をしていないのに、世間の好奇の目に晒されます。
被害者が悪い事をしたかのように噂されます。ましてや妻の場合、野田との過去が有り、万が一
罪に問えても、誰が見ても、妻にも非が有るように見られて当然です。
「でも、全て事実だろ?お前のして来た事だろ?それで苦しんだ俺はどうなる?今も苦しんでい
る俺はどうなる?お前だけでは無い。俺だって世間から後ろ指を指される。妻を寝取られた、情
けない男だと噂される。お前と違い、俺は何もしていないのに、好奇の目で見られるのは同じだ。
このままで、俺を犯罪者にしたいのか?」
妻は泣いて謝るだけで、話になりません。
妻の言っている事も分かります。何より証拠が有りません。残っているのは妻がクシャクシャに
してしまった、妻が微笑んで足を開いている写真だけです。この写真は証拠になるどころか、逆
効果だと思いました。やはり、私が思ったように誰が見ても、昨年まで不倫していた人妻が、旦
那が単身赴任になってしまい、寂しくなって因りを戻した。ところが旦那にばれ、自分から男の
アパートに通っていたにも関わらず、自分可愛さに強姦されたと言い出した。と思う方が自然で
す。
これは、妻の話を信用した場合ですが、妻が自分から進んで会っていたか、それともまだ私に話
していない何らかの理由が会って、訴える事が出来ないので、そう言っている可能性も有り、考
えていた事を実行に移す事にしました。
「美鈴、明日から少しの間、距離を置かないか?俺の気が済むまで会わないでおこう。しばらく
帰って来ないから、お前も来るな。勿論電話もしない。1ヶ月ほど掛かるかも知れないが、1人
になって色々考えたい。」
「嫌です。お願い、許して。別れたく有りません。許してください。」
「別れる事を考えたいのでは無い。今後俺は何をすれば気が済むのか、1人で考えたいだけだ。
美鈴には悪いが、1度誰の事も気にしないで、自分が納得の行くように考えたいだけだ。」
「それにしても、1ヶ月も嫌です。お願いします。お願いします。」
「1ヶ月も身体が我慢出来ないか?野田の所へ行ってしまいそうか?」
「違います。その様な事は決して有りません。そんな事を言わないで。お願いします。もう、許
して下さい。お願いします。せめて電話ぐらいは・・・・お願いします。」
泣いて謝っていた妻も、私の意思が固いのを知り、どうにか承諾しました。

 

戦い 第53回

5月23日(日)

あれから1週間、1度も妻の声を聞いていません。私の歳ならよくある事かも知れませんが、や
はり不安になります。ここ2、3日は嫌な夢ばかり見ています。昨夜などは、我が家に帰ると、
妻と子供達だけではなくて、妻の両親も一緒に食事をしているのですが、私の席には野田が座っ
ているのです。その後寝付かれず、今日は寝不足で疲れました。
今日も昨日も出勤しました。妻には言っていませんが、26日に本社で会議が有り、そのまま4
連休にして向こうにいる為です。もし妻が嘘をついていた時、電話も掛かって来ないのを良い事
に、次の日から、もう野田に会っている事も考えられますが、前回の事も有り、まだ警戒してい
て、その可能性は少ないと思いました。1ヶ月と言っていても、いつ私が帰って来てしまうか分
からないので、動くとすれば来週辺りだと読んでいますが、大した根拠では有りません。
私がしばらく帰らない事を、野田には伝えて有りませんが、毎日妻を観察しているあいつの事で
す。必ず妻の変化に気付くはずです。野田が嘘をついていた場合も、気付けばそろそろ、何か接
触を持つと考えました。

5月27日(木)

昨日は本社での会議が午後からだった為に、終わるのが遅くなり妻を見張る事が出来ず、夜8時
半頃家の前を通りましたが、明かりが点いていて、妻は何事も無く帰宅している様子でした。
今日は朝早くから、妻の会社の真向かいの、ビルの1階に有る喫茶店で様子を見ていましたが、
妻は普段通りに出社した為、宿泊先のビジネスホテルに一旦戻り、また昼前にこの喫茶店で様子
をうかっていました。この喫茶店は、落着いた雰囲気のお洒落な喫茶店なのですが、少々高い為、
ほとんど利用した事が無いと、以前妻と待ち合わせをした時に聞いた事が有り、妻の会社もよく
見え、見張るのには絶好の場所でした。
妻の言うとおり、多少高めのサンドイッチを食べながら見ていたのですが、野田が出てきただけ
で、妻は出て来ません。今日はお弁当を持って行ったのでしょう。夕方も妻が退社する1時間も
前から見張っていましたが、定時に退社すると駅の方に歩いて行きました。私はタクシーで先回
りしましたが、渋滞にあってしまい、すでに家には明かりが点いていて、今日も何事も無く帰宅
したようです。やはり、私の思惑通りには進みません。

5月28日(金)の1

2日間で自信を無くし、半ば諦めながら昨日の喫茶店で昼食をとっていると、今日は外食なのか、
妻が若い女子社員と2人で出て来ました。すると野田が小走りで出てきて、2人を呼び止めたら
しく、2人は立ち止まったのですが、少しして気を利かせる様に若い女子社員1人が歩き出し、
妻と野田は何やら深刻そうに話しています。その後妻は、少し離れた所で待っている女子社員の
所に行き、野田は1人で反対方向へ歩いて行きました。
仕事の話だったのかも知れませんが、今週、どちらかが行動を起こす事を期待していた私は、今
夜何か有ると思いしまいました。
今日も定時に退社した妻は、すぐタクシーに乗り込みました。駅までは近く、普段タクシーを利
用する事は有りません。私は慌てて喫茶店を出るとタクシーを拾いました。妻の乗ったタクシー
はもう見えませんが、行き先は想像が付きます。
タクシーを降りてアパートに入ろうとした時、もう1台タクシーが着いたので、野田だと思った
私は、急いで2階の踊り場に駆け上がり、身を隠しました。ドアが開いて、閉まる音がしたので、
野田の部屋に行こうとすると、足音が近付いて来ます。2階から外を見ていると、野田が不機嫌
そうな顔で、携帯で何やら話しながら、自分の車に乗り込むと出て行ってしまいました。訳が分
からない私は部屋まで行くとチャイムを鳴らしてドアに耳を当てましたが、人の気配は有りません。
タクシーで我が家に急ぐと、家の前に野田の車が止まっていましたが、すでに野田の姿は無く、
妻が我が家に野田を入れたかと思うと、怒りが込み上げて来ます。少し通り過ぎた所で降り、ど
ちらが嘘をついているのか確かめる為に怒りを静め、静かにドアを開けようとすると、どちらが
閉めたのか鍵が掛かっていました。合鍵で開けて入ったのですが、少し音をたててしまい、気付
かれたかと思いましたが、中に入ると、客間の方で2人の言い争う声が聞こえました。

 

戦い 第54回

5月28日(金)の2

私は忍び足で客間のドアの前まで行き、聞き耳を立てていると。
「だから、どうしてアパートに来てくれなかったかと訊いているだろ。」
「もう許してください。もう嫌なんです。帰って下さい。」
「許して?それでは私が脅している様に聞こえるじゃないか。確かに最初は脅す様な形になって
しまった。そうでもしないと会ってくれないと思った。しかし、それからは違うだろ?」
「いいえ。ずっと脅されて・・・・・・。」
「本当にそう思っていたのか?俺は遊びのつもりだった。最初の日を覚えているか?口では嫌が
っていたが、今迄に見た事も無い様な乱れ方だった。美鈴は何回も達してしまい、私も2回出し
てしまったので、もう終わりにしようと思ったが、美鈴は“もっとして。もっと頂戴。欲しい、
これが欲しいの。お願い、入れて。入れて下さい。”と言って私のを咥えて来た。何とか硬くし
ようと必死に口を使っていた。」
「・・・・・・私・・・・・・そんな事は・・・・・・・・。」
「覚えてないのか?その時私は思った。美鈴は“主人が有りながら、他の男に犯されている。嫌
なのに無理やりされている”と思う事で、余計に感じているのだと。だから私はゲームのつもり
で、その役になり切った。美鈴も分かってくれていると思っていた。」
「違います。私は脅されて・・・・・・・。」
「本当にそうか?嫌がるのは最初だけで、自分から私の物を触ってきた事も有っただろ?私が何
も言っていないのに、後からされるのが好きな美鈴は、自分から四つん這いになった事も有った
だろ?それも覚えていないか?」
「私・・・・・そんな事は・・・・・して・・・・・・。」
「私は最初から、写真なんて他の者に見せる気は無かった。美鈴に嫌われる様な事をするはずが
無い。真面目な美鈴は、その方が私の所に来易いと思った。“行きたくないのに、脅されている
から仕方なく行くんだ”と自分に言い訳が有った方が来易いと思った。何より、その方がより感
じている様子だったし。本当に脅すつもりなら、写真を処分なんかしない。本当にもう1枚も持
っていない。」
「だって、今日。」
「今日?今日は大事な話が有るから、アパートに来て欲しいと言っただけだ。写真なんて一言も
言っていない。会社の窓から見ていて、タクシーに乗ってくれたので、来てくれていると思って
いたが、帰っても居なかったので、少し興奮してしまった。でもタクシーに乗ったところを見る
と、本当は迷っていたのだろ?」
「・・・・・・・・・・・。もう帰って下さい。ここには来ないで。早く帰って、帰って。帰っ
て。・・・・・・いやー、離して。離して。」
おそらく、野田が妻に抱きついたか何かしたのでしょう。私は、飛び込んで行きたい気持ちを我
慢しました。
「美鈴、落着け。私の話を聞いてくれ。別れた妻が再婚する。」
「えっ。」
妻は知らなかった様で、それを聞き、抵抗を止めたのか静かになりました。
「あいつが再婚する事になった。それも相手は以前不倫していた先生だ。私は何もかも嫌にな
り、2人共殺してしまいたいと思った。しかし出来なかった。何故だか分かるか?私ははっきり
と気が付いたからだ。別れた妻に有るのは未練だけで、本当に愛しているのは美鈴だけだと、気
が付いたからだ。」
「そんな・・・・・・・一方的に・・・・・・・・・・。」
「みんなには黙っていたが、来月の初め海外に転勤する。部長待遇にはなるが、小さな支店で、
ほとんど左遷と同じだ。今海外に飛ばされると、また転勤が有ってもたぶん海外で、もう定年ま
で帰れないかも知れない。会社も勝手な物で、私が独身になったから、遠い所にでも自由に移動
させやすくなったのだろう。先月の初めに打診が有り、別れた妻にその事を言いに行こうとした
時、再婚する事を知った。」
私は、ただ言いに行ったのではなく、向こうでもう一度やり直す為に、一緒に行ってくれる様に、
頼みに行ったのだと思いました。野田はずっと、復縁を持ち掛ける機会を伺っていたのでしょう。
良い切欠が出来、今日こそ言おうと張り切って出かけた。しかしその時、楽しそうに食事をして
いる所を見てしまった。野田にすれば天国から地獄だったでしょう。野田の悔しさは、私の想像
以上で有った事を知りました。
「でも良かった。再婚話のお蔭で、自分の本当の気持ちに気付いた。私はどうしても美鈴と一緒
に行きたくなったが、こればかりは1人で決められない。それで美鈴を試してみたくなった。
美鈴が私の事を、どの様に思っているのか知りたかった。美鈴と何回か会い、身体を重ねていて
“美鈴は付いて来てくれる。私からは離れる事は出来ない”と確信し、一緒に来てくれと、いつ
切り出そうか考えていた時、旦那に分かってしまった。それでも私は美鈴を信じていたが、私が
ずっと脅して関係を持っていたと聞かされた時、私とはセックスだけの関係で、本当に愛してい
るのは旦那だと思って諦めた。」
「勝手な事ばかり言わないで。私は脅されて・・・・・・・。」
「本当にそうか?そう言い切れるか?自分でそう思いたいだけでは無いのか?私はそんな女で
は無いと、自分に言い聞かせているだけでは無いのか?」
私は妻が、野田の言う通りだったのでは無いのかと思いました。自分では気付かなくても、気付
きたく無くても、何処かに引け目が有り、訴えるとかいう、強い態度に出られなかったのでしょ
う。
もしもその通りだとすると、2人共が私を騙していた事になります。
「一度は諦めたが、よく考えたら、美鈴は、以前の私と同じでは無いかと思えてきた。旦那には
未練が有るだけで、それを愛と勘違いしていないか?本当に私と、もう会えなくなってもいいの
か?今の生活を守りたいだけだろ?このまま旦那に責められながら、一生を終わってもいいの
か?そういう人生でいいのか?もう子供も大きくなった。これからは美鈴自身の事を考えてもい
いのではないのか?」
妻の声は聞こえません。私は心の中で“どうして黙っている。違うとはっきり言ってやれ。脅さ
れていただけで、お前は嫌いだと言ってやれ。”と何回も叫んでいました。
「もう一度よく考えてくれ。確かに私と美鈴は、旦那に対して取り返しの付かない事をした。だ
からと言って、一生責められるだけの人生でいいのか?まだ人生、半分有るのだぞ。何もかも忘
れて、私と向こうで楽しく暮らそう。別れた妻や子供達の為に、ほとんどを渡してしまったから、
財産と呼べる様な物は無いが、持っている物全て、旦那に慰謝料として渡す。美鈴も全て置いて
出て来い。向こうで1からやり直そう。」
私は固唾を飲んで、妻の返事を待ちました。

 

戦い 第55回

5月18日(金)の3

妻の身体だけが私を裏切ったのか、気持ちまで裏切っていたのか知りたくて、耳に全身系を集中
させていました。
「それと・・・・少し言い難いのだが、美鈴の旦那は精神的におかしいぞ。美鈴の前ではどうか
知らないが、あれは可也苦しんでいる。もう楽にしてやってはどうだ?別れたいのに、自分では
決断出来なくて苦しんでいる。旦那の為にも私と遠くへ行って、楽にしてやれ。一緒に行ってく
れるな?」
しばらく沈黙が続いた後。
「嫌です。私が愛しているのは主人だけです。主人には一生責められても、仕方が無いと思って
います。課長とは行きません。私は主人といます。本当に主人がおかしいとしたら、それは私が
原因です。尚更私は側にいます。第一、主人に離婚されても、好きでも無い課長と一緒になる事
は有り得ません。」
妻に交際を申し込んでから、返事をドキドキしながら待っていて、やっと付き合いを承諾してく
れた時を思い出しました。ずっと野田の話を聞いていて、妻に裏切られた気分でいました。しか
し、妻の答えを聞いて、何故かほっとしたのですが、すぐに返事をしなかった事が気になります。
私から責められて過ごす人生か、野田と楽しく暮らす人生の、どちらが良いか迷っていたのでし
ょうか?それとも、本当に愛しているのは、私なのか野田なのか考えていたのでしょうか?その
事を思うと、ほっとしてはいられません。
「だからそれは、未練が有るだけだと言っているだろ。それに、私の事を好きでは無いと言うな
ら教えてくれ。私の事は嫌いか?顔も見たくないほど嫌いか?正直な気持ちを教えてくれ。」
「嫌いとか好きとかでは有りません。仕事では尊敬していますし・・・・・・。」
「ほら見ろ。脅されて犯されたと思っていたら、嫌いになるはずだ。顔を合わせてしまう会社に
は、出て来られないはずだ。美鈴の言う、脅す様な形で結ばれた次の日も、会社に出て来たのを
見て、私の事をまだ好きなのだと確信した。美鈴が“全て脅されて関係を持った。”と言ってい
た事を旦那から聞かされた時、もう諦めたはずが、それなら何故、まだ会社を辞めずに普通に接
してくるのだろうと考えたら、やはり、まだ私の事を好きなのだと思った。」
「だから違います。負け犬になりたくなかっただけです。あのまま辞めてしまったら、課長に負
けると思いました。仕事で見返してやろうと思ったから・・・・・・・・・。」
「それなら聞くが、あのセックスは何だったんだ?美鈴は、嫌いな男でもイク事の出来る女か?
嫌いな男に抱かれて、何回も達してしまう様な女なのか?違うだろ?私の事を好きなんだろ?」
「違います。私が愛しているのは主人だけです。」
「それなら美鈴は、ただの淫乱な女と言う事か?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「美鈴はそんな女ではない。今の生活を変える事が怖いだけで、本当はまだ私を好きなんだ。」
「違います。私が愛しているのは主人・・・・やめて下さい。離して。何をするのですか?止め
ないと大きな声を出します。」
「美鈴が迷っているから、背中を押してやるだけだ。また私と1つになれば、きっと本当の自分
の気持ちに気付く。」
「止めてください。嫌です。大きな声を出し・・・・。」
妻の言葉が途中で途切れた時、私は部屋の中に飛び込んで行きましたが、そこで私が見た物は、
唇を野田の唇で塞がれた妻の姿でした。
2人は私に気付いてすぐに離れましたが、なぜ私がいるのか訳が分からず、急な事で言葉も出せ
ずに固まっています。私が無言で近付いて行くと、ようやく妻が駆け寄って来て。
「あなた、違います。これは違うんです。これは・・・・・・・。」
「何が違う?どう違う?」
妻の頬を平手で張ると、妻は泣き崩れました。
私が野田に近付くと、野田は崩れ落ちる様に座り込んでしまいましたが、少なくなった髪の毛を
掴んで上に引っ張ると、素直に立ち上がりました。
私は1歩下がって思い切り殴ると、野田はソファーに尻餅をつきましたが、それでも気が収まら
ず、今度はまた髪の毛を掴んで顔面を膝で蹴りました。すると、歯に当たってしまったのか、膝
に痛みが走りましたが、野田も歯で上唇を酷く切ったらしく、口から可也血を流しています。
野田の唇はどんどん腫れていき、小さなタラコの様になっていきました。野田は余程痛いのか、
両手で口を覆いましたが、また髪の毛を掴んで、覆っている手も一緒に、もう一度膝で蹴ると、
流石に野田は呻き声を上げて、顔を手で覆ったまま床に蹲りましたが、私は更に、蹲っている野
田の腹を1発蹴って部屋を出ました。

 

戦い 第56回

5月28日(金)の4

部屋に戻ると、妻は泣きながら震えていましたが、私の右手に包丁が握られている事に気付き、
私の所に走って来て。
「あなた、やめてー。止めて下さい。ごめんなさい。私・・・・・私・・・・・。ごめんなさい。
許して下さい。」
「そんなにこいつが大事か?見るのが嫌なら隣の部屋に行っていろ。」
「違います。私があなたを犯罪者にしてしまう。ごめんなさい。ごめんなさい。」
「お前が謝るのは聞き飽きた。それに、もう犯罪者になっている。野田の顔を見てみろ。」
「これ以上は。これ以上は・・・・・・・・。」
妻を突き飛ばして野田の所に行きました。包丁を取りに行った時は、殺してやりたいと思いまし
たが、私には刺せません。刺せないどころか私の足も震えています。
本当に自分の弱さが嫌になります。暴力もそうです。自分が弱い人間だと分かっているから、逆
に強く見せようと、すぐに手が出てしまいます。喧嘩が強い弱いでは無く、人として弱いのです。
私には人を殺せないと何処かで分かっているのに、カッとしてこの様な行動に出てしまいます。
殺す事は無理だと分かると、今度は脅しに変わっていました。軽く蹴りながら仰向けに寝る様に
言うと、野田は首を捻って私を見て、手に包丁が握られている事に気付き、顔を両手で覆ったま
ま、素直に仰向けになって震えています。私は一度包丁を置いて、野田のズボンとパンツを剥ぎ
取りましたが、余程怖いのか、野田は何の抵抗もしません。野田の物は恐怖の為か、縮まってい
る様でしたが、私が包丁の背で軽く叩くと更に小さくなり、子供のそれの様になっています。
私はずっと、くだらない事が気に成っていました。見た事も無い野田の物に、コンプレックスを
持っていました。妻をここまで虜にした野田の物は、私より遥かに太くて長いと思っていたので
す。特に昨年夢で見た、一升瓶ほど有る野田の物が頭から離れず、当然そこまでは有る筈が無い
のは分かっていますが、私が見た事も無い様な、大きな物を想像していました。
野田の物を見て、この様な時に、今後どうなるか分からない大事な時に、少し気が楽になりまし
たが、またちっぽけなプライドが邪魔をして、自分のと比べたくて裸にしたとは、気付かれたく
有りません。咄嗟に次の言葉を用意しているずる賢い私です。ずる賢さは野田以上かも知れませ
ん。
「これが美鈴の中に入ったのか。こいつを切り取れば、幾らかでも気が収まるかも知れない。お
前も殺されるよりはいいだろ?」
私は妻の所に行き、髪の毛を鷲掴みにして連れて来ると、野田の縮んだ物に、妻の顔を擦り付け
様としました。野田は恐怖心からか、仰向けのまま、じっと動かずに震えています。
「小さくなり過ぎて、切り取り難い。美鈴が大きくしてやれ。早く口に咥えないか。得意だろ?」
妻は必死に野田の物から顔を背け。
「ごめんなさい。許して下さい。ごめんなさい。」
私は妻を放し、包丁を持ったまま、テーブルを挟んだ向かい側のソファーに座って、次に何をす
れば良いのか、考えようとしましたが、一度殺すと言った手前、引っ込みが付かなくなっていて、
思ってもいない事が、口から出てきます。
「野田、死にたくないか?俺の言う事を何でも聞けるか?」
野田は仰向けに寝転んだまま、手で覆った顔で何度も頷きました。
「美鈴、お前も俺の言う事を聞けるか?そうすれば、包丁は置く。」
「はい。何でも聞きます。言って下さい。あなたの言う事は何でも・・・・・・。」
「そうか。それならここで、俺の目の前でしてみろ。今まで、俺に隠れてしていた事をしてみろ。
もう美鈴を妻とは思わん。こんな女を妻と思いたくない。お前達がしている所を見れば踏ん切り
がつく。野田、チャンスだぞ。俺達が別れれば、お前の思い通りに成るかも知れないぞ。」
しかし、野田は震えているだけで動きません。
「あなた、許して。出来ません。そんな事出来ません。」
「あなたと呼ぶな。お前を妻だとは思わないと言っただろ?今何でもすると言ったのは嘘か?早
くしろ。美鈴の1番好きな事だ。それに、他人に見られている方が感じるんだろ?どうする?俺
が野田を殺すか、俺の前でこいつとセックスをするか、2つに1つだ。」
「ごめんなさい、出来ません。許して下さい。出来ません。」
「美鈴は自分が可愛いだけだろ。俺を犯罪者にしたく無いと言ったのは嘘だろ?・・・・・・・
・・・野田、悪いな。出来ないそうだ。」
私が包丁を持ったまま立ち上がると、妻が夢遊病者の様に野田に近付き。
「・・・・・分かりました。・・・・・・・あなたの気が済む様に・・・・・・。」
「そうか。早く野田の物を大きくしてやれ。」
妻は野田の横に座って手で触ろうとしましたが、すぐに手を引っ込め。
「ごめんなさい。やはり出来ません。私には出来ません。」
妻は泣き崩れました。
「野田。俺がいては大きくならないか?美鈴、俺はキッチンに行っているから、その気になった
ら、大きな声で呼んでくれ。」
私はドアを開けたまま、キッチンへ行って水を1杯飲むと、気持ちが少し落着きました。
気持ちが落着くと、そこには、傷害で警察に捕まった時の言い訳を考えている、気の小さな私が
いました。

 

戦い 第57回

5月28日(金)の5

私の目の前で、妻と野田にセックスをしろと言ってしまい、その時は、思ってもいない事が口か
ら出たと思いましたが、妻の泣き声を聞きながら考えていて、本当にそうだったのかと、自問自
答していました。
私には、野田と妻のセックスを見てみたい気持ちが、ずっと有りました。それは勿論、見て興奮
する為では有りません。興奮どころか、悔しさが増すだけだと分かっています。それでも、妻と
野田だけの世界が有る事に我慢出来ません。私の知らない妻がいることに我慢出来ません。例え
それが、私にとって辛い事でも、妻の事は何でも知っていたいのです。
野田が海外に行ってしまうと聞き、もうチャンスは無いという思いが何処かに有って、あんな事
を言ってしまったのだと気付きました。
それならば、あのまま飛び込んで行かなければ、2人はそう成っていたかも知れませんが、妻の
言葉が途切れ、キスをしていると思った瞬間、その後に進む事は許せませんでした。私の意思で
は無く、野田の意思で結ばれる事は、我慢出来ませんでした。される事は同じかも知れませんが、
勝手にされるのかどうかでは、私の中で大きな違いが有ります。
私が客間に戻ると、野田は大事な所が見えない様に、膝を立ててソファーにもたれ、涙を流して
います。この涙は、恐怖心からでは無く、何もかも失ってしまった思いから、出て来たのだと思
いました。今は下を向いて泣いていますが、私が入って来た時、妻は泣きながら野田の顔を見て
いました。いいえ、見ていたと言うより、私には見詰めている様に見えました。
私の考え過ぎかも知れませんが、まだ妻を疑っている私には、こういう小さな事も気になり、そ
の事でまた怒りが増し。
「2人共何をしている。俺の言った事が分からないのか?泣いても誤魔化されないぞ。早く服を
脱げ、俺の前でしてみろ。それ以外絶対に許さん。美鈴、今更恥ずかしく無いだろ?俺が脱がせ
てやる。」
妻は抵抗するだろうと思っていましたが、以外にも、何の抵抗もしないで、私にされるまま全裸
になりました。妻は涙を流していても、もう泣き声は無く、焦点の合わない目で、一点を見詰め
ています。
「野田、美鈴は素直に裸になったぞ。美鈴に恥を掻かせる気か?お前も俺が脱がさないと出来な
いのか?」
野田も焦点の合わない目をして、ゆっくりと上着の釦を外しだしました。
妻の背中を押して、長いソファーまで連れて行き、仰向けに寝かせましたが、妻は恥ずかしい所
を隠しもせずに、人形の様に横になっています。
「野田、どうした。美鈴が待っているぞ。」
野田は力無く立ち上がり、妻の前に立ちましたが、何もせずに立ち竦んでいました。私は妻の足
元に回り、妻の片足をソファーの下に落とすと、足が開いた格好になりましたが、それでも妻は
隠す事をせずに、じっとしています。
野田の後頭部を掴み、妻の中心に顔を押え付けようとしましたが、片手をソファーにつき、初め
て抵抗しました。私は2人から少し離れた所に座り込んで、2人の様子を見ていましたが、2人
共魂が抜けてしまった様に動きません。この部屋の中で生きているのは、私だけの様でした。
妻を見ていて、私が知りたかった妻は、こんな姿の妻では無かった事に気付き、今日は無理だと
思いましたが、この行為で見てみたい気持ちは更に大きくなり、野田が外国に行ってしまう前に、
私には見せない妻の姿を見る事が出来ないか、先の事を考えてしまいます。
今日は無理だと知ると、今度は気の小さな私が現れ、この行為で、妻の気持ちが野田に向いてし
まったのではないかと、少し心配になり。
「もういい。美鈴と2人で話しをするから。お前はこっちで待っていろ。」
また髪の毛を掴み、玄関まで引っ張って行ってドアを開けると、全裸の野田は流石に少し抵抗し
ましたが、私は野田を外に蹴り出して鍵を閉めて部屋に戻り、涙を流して、そのままの格好で寝
ている妻の枕元に座り。
「もう俺の事が嫌になっただろ?別れたくなっただろ?」
その言葉を聞き、ようやく身体を起こして座ると、両手で大事な部分を隠した妻は、勢い良く何
度も首を横に振りました。それが本当かどうか分かりませんが、少し安心した私は。
「美鈴、今日俺がいなければ、抱かれるつもりだったのか?俺達のこの家で、抱かれるつもりだ
ったのか?」
妻はまた、何度も首を横に振りました。

 

戦い 第58回

5月28日(金)の6

妻は上半身を捻って私の方を向き、縋る様な目で、私の目を見詰めました。
「お前が嫌がっていたのは聞いていた。でも、どうしてキスされた時に抵抗しなかった?」
妻は弱々しい小さな声ですが、ようやく口を開き。
「抵抗しました。課長に抱き付かれて抵抗したのに、強引にキスされた瞬間、あなたが入って来
て・・・・・・・・・・・。」
「そもそも、何故あいつを家に入れた。少しは期待していたのだろ?」
「違います。帰ってくれる様に何度も頼みました。あのままでは近所の人に・・・・・・・。」
「近所に自分の事を知られるよりは、抱かれた方がいいと思った訳だ。俺が来た時鍵が掛かって
いたが、お前が掛けたのか?」
「抱かれるなんて、思ってもいませんでした。課長が大事な話があるから、聞いてくれればすぐ
に帰ると言ったから、玄関先で騒がれるよりはいいと思って。それと、鍵を掛けたのは私では有
りません。課長です。」
「鍵を掛けられたのを知っているじゃないか。普通そこでおかしいと思うだろ?鍵を掛けられた
時点で、何をされるか想像がつくだろ?やはり野田の言っていた様に、自分に言い訳が欲しいだ
けで、抱かれたかったのだろ?今日だけでは無い。今までも、無理やりされていると思いたいだ
けで、抱いて欲しくて野田のアパートに行っていたのだろ?」
「違います。そんな事有りません。違います。課長が、重大な話だから、途中で誰にも邪魔され
たく無いと言ったから・・・・・・・。」
「美鈴、お前はどうして野田をそこまで信用する?家に入れた時も、鍵を掛けられた時も、どう
して信用する?お前を脅して犯した男だろ?お前は俺に殺したいほど憎いと言っていたよな?
そんな憎い奴をなぜ信用する?なぜ俺達の家に入れる?本当は野田の事を・・・・・・・・。」
今まで縋る様な目をしていた妻の目が険しくなり。
「違います。私が愛しているのは、あなただけです。あなたが好きです。あなたを愛しています。」
私は妻の真意を計り兼ねていました。妻の目を見ていると、本当に私を愛しているのだと思って
しまいます。私の知人にも、若い時は真面目だったのに、歳を取ってからギャンブルに嵌ってし
まい、未だに抜け出せない奴がいます。また、昔は真面目で、隣に女の子が座る店でさえ、そん
な店は汚らわしいと言っていたのに、女遊びに嵌ってしまい、離婚した奴も知っています。
妻も彼らと同じで、若い頃から超が付くほど真面目でした。それが野田との不倫で、今までとは
違ったセックスの良さを知ってしまい“こんな事はいけない、こんな事は止めよう”と思ってい
ても、抜け出せないでいただけなのでしょうか?
しかし、自分は人妻なのだから夫以外を愛してはいけない、夫の事を愛していなければ駄目だと、
思い込んでいる事も考えられ、本当は野田の事が好きでも、世間一般の概念で許されない事だと
いう思いから、野田への思いを閉じ込め、その裏返しに私の事を好きだと、思い込んでいる可能
性も有り。
「本当に俺を愛しているのか?野田を愛しているのでは無いのか?」
「課長を愛してなんかいません。あなたを愛しています。あなたが好きです。」
「そうか・・・・・。それなら、どうして野田に抱かれた?どうして好きでも無い奴で感じた?
さっき聞いてしまったが、愛してもいない奴で、どうして自分が分からなくなってしまうほど、
感じる事が出来たんだ?本当は野田が好きなのでは無いのか?愛していてはいけないと思って
いるだけだろ?そうでないと、そこまで感じる事は出来ないだろ。」
「ごめんなさい。分かりません。どうして感じてしまうのか分かりません。ごめんなさい。でも、
愛しているのはあなただけです。本当です。本当です。」
この質問は昨年から何回もしています。答えもほとんど同じです。嘘でも妻に“あなたを愛して
います。”と言って欲しいだけかも知れません。自分に自信が無く、そう言われないと、不安な
のかも知れません。
私も結婚前は、愛の無いセックスもしました。最近も、野田の別れた奥さんと、そうなれる事を
期待していました。愛が無くても快感を得られる事は知っています。しかし、男のエゴかも知れ
ませんが、女である妻が、愛も無いセックスで快感を得る事は許せませんでした。愛も無しに男
の所に通う女では、あって欲しく有りませんでした。そうかと言って、野田との間に愛が有れば、
もっと許せないのでしょうが。

 

戦い 第59回

5月28日(金)の7

以前は私が責めて泣かせていても、妻が涙を流している姿を見ると心が痛みました。ところが今
では、慣れてしまったのか、さほど感じなくなっています。私は意地に成っているだけで、妻へ
の愛情が醒めてきているのかと、考えている自分に寂しさを覚えました。
別れるかどうかは別にしても、もう元の夫婦には戻れないと思うと、昔の事が頭の中を巡ります。
付き合っていた頃、初めて結ばれた時、結婚式、子供が生まれた時、子供が手を離れて行った時、
色々な事が頭の中を通り過ぎて行きます。
「美鈴、昔は楽しかったな。子供が生まれ、子供達と動物園へ行ったり、遊園地へ行ったり。こ
の家族がいれば、他には何もいらなかった。美鈴や子供達が笑っていれば、他には何も望まなか
った。子供達が成長して、手を離れていった時は寂しかったが、喜ばなければいけないと、自分
に言い聞かせた。まだ俺には美鈴がいると思った。美鈴だけを見て、生きて行こうと思った。で
も美鈴は違っていたんだな。美鈴には俺だけでは無かったんだな。昔に戻りたいな。昔を懐かし
く思うのは、歳を取った証拠かもな。昔には戻れない、以前の夫婦には戻れないと分かっている
のに・・・・・・・・・・・。」
昔を思い出し、つい出てしまった言葉が、結果的に妻を責める事になってしまい、妻は、近所に
聞こえるのでは無いかと思うほど、大きな声で泣き出しました。
妻が泣き止むのを待っていて、野田の事を思い出し、野田の服とセカンドバッグを抱えて玄関を
出ると、野田は片方の手で股間を隠し、もう一方の手で口を覆って隅の方に蹲り、身を隠してい
ます。“これがあの雄弁で強気だった野田か”と思えるほど、野田は小さく見えました。その姿
を見た時、私の家庭を、私の人生を無茶苦茶に壊した男なのに、妻を辱め、その妻を奪い去ろう
としている男なのに、何故か哀れに思えました。しかし、優しい言葉は掛ける気にならず、持っ
ていた物を投げ付けると。
「野田、いつから転勤になる?いつ向こうへ行く?」
「来月の・・8日に・・・・日本を発とうかと・・・・・・。」
私が部屋に飛び込んでから、野田の声を聞いたのは初めてです。
妻の所に戻ると、妻はまだ激しく泣いていたので、頭を冷やす為にもシャワーを浴びようと、服
を脱いでいると、ドアの外に人の気配がしました。
「美鈴、今日は洗ってくれないのか?」
妻は裸のまま入って来て、ボディーソープを付けたスポンジで、私の身体を力一杯擦りながら泣
いています。いつも通り最後の場所は手で洗ってくれ、泡をシャワーで洗い流すと、何も言わず
俯いていたので。
「今日は、最後のサービスは無しか?」
それを聞き、妻はむしゃぶりついて来ました。精一杯、私にサービスするつもりで、一生懸命し
てくれているのですが、流石に今日は、私の物も反応しません。
「もういい、気持ち良かった。美鈴もシャワーを浴びて来い。」
まだまだ知りたい事が有り、寝室で待っていましたが妻は来ません。余りに遅いので様子を見に
行こうと思った時、バスタオルを巻いただけの格好で妻が入って来ました。
「遅かったが何をしていた?まだ聞きたい事が有ったが、今日はもう寝よう。」
すると妻は、私の質問には答えないで、立ったままバスタオルを下に落とし。
「あなた、抱いて下さい。こんな私ですが抱いて下さい。一生のお願いです。今夜だけはどうし
ても抱いて欲しい。無茶苦茶にして欲しい。」
私の返事も聞かずに、飛び掛るように私を押し倒し、乱暴に私を裸にすると、夢中で体中に舌を
這わせて来ます。私は呆気に取られ、妻のしたい様にさせていました。妻の執拗な攻撃で、今日
は無理だと思っていた私の物が反応を示すと、妻は上に跨り、自分で中に収めると、凄い勢いで
腰を使って来ます。この時の妻は鬼気迫る物があり、達して胸に崩れ落ちても、またすぐに起き
上がり、腰を使って来ます。私が一度放出したにも関わらず、妻の物と私の出した物で、べとべ
とになった物を、また口に含み、これでもかと言うぐらい舌を使い、また元気にすると腰を沈め
て来ました。

 

戦い 第60回

5月29日(土)の1

昨夜は、何がどうなったのか分からないぐらい私も興奮し、達しても、達しても求めて来る妻に、
私も激しく応戦したせいか熟睡してしまい、目が覚めると昼前でした。隣で寝ていたはずの妻
の姿は無く、家中探しましたが何処にもいません。窓から外を見ると妻の車が有りません。
訳が分からず、水を飲もうとキッチンへ行くと、先程は気付きませんでしたが、テーブルの上に
1枚の便箋を見付けました。
〔あなた、ごめんなさい。私もずっと昔の事を思い出していました。私も昔に戻りたいと思いま
した。あなたに出会った時から、現在までの自分と向き合っていて、その時私は、気付いてしま
いました。あなたの言う通り、心のどこかで課長に抱いて欲しくて、アパートに行っていたと気
付いてしまいました。そんな筈は無いと、またその事を打ち消したのですが、シャワーを浴びな
がら考えていると、色々な事が分かって来ました。昨年あなたを裏切ってしまい、あなたに許し
てもらえたのに、今年になってからも、あなたがいない夜、何回も課長との行為を思い出して、
自分で慰めていた事も分かりました。いいえ、分かっていたのに今まで、そんな事は無いと、自
分で自分を否定して来ました。結局昨年から、ずっとあなたを裏切り続けていたのです。言われ
た通り、今回も私は、脅されて無理やりされたと、自分に言い聞かせていただけで、本当は気持
ち良くなりたくて、被害者を装いながら通っていたと、はっきりと分かりました。でも本当にそ
れまでは、脅されたから仕方無かったと思っていました。私は被害者だと思っていました。こん
な事を書いてから、信じてもらえないでしょうが、私が愛しているのは、あなただけです。課長
との行為に溺れてしまった私ですが、愛しているのは、あなただけです。あなたを愛しています。
それだけは信じて下さい。自分のしてしまった事に気付いた以上、もうあなたの目を見る事は出
来ません。本当は、人生最後の瞬間はあなたに手を握り締めていて欲しかったのに、それも自分
で駄目にしてしまいました。あなたと出会えて良かった。あなたと夫婦になれて良かった。あな
たの妻で凄く幸せでした。今まで本当にありがとう。愛しています。〕
この便箋は、何箇所か文字が滲んでいます。
私の頭に“自殺”という文字が浮かび、昨夜の妻を不思議に思いながらも、気が付かなかった事
を悔やみました。
妻の携帯に電話しても、電源が切られています。こんな緊急事態でも、詳しい内容までは話せず、
夫婦喧嘩をしたら出て行ったと、妻の実家や、子供達の携帯に電話をしましたが、妻は何処にも
いません。いつ出て行ったのかさえ分からず、今向かっている可能性も有り、もしもそちらに行
ったら連絡が欲しいとだけ言い、警察に行くと。
「夫婦喧嘩で、それも今朝いなくなったばかりでしょ?一応探しますが、心配無いと思います
よ。」
私が真実を話せず、便箋も見せなかったので無理も有りません。野田の所には行っていないと思
いながらも、アパートに急ぎました。
野田は私と分かると、ドアを開けてくれなかったので、もしや?と思いましたが、妻がいなくな
った事を言うと、ようやく中に入れてくれました。野田に便箋を見せると、野田の表情は見る見
る変わり。
「私も心当たりを探します。」
そう言って、すぐに誰かに電話し。
「君の所に、美鈴君は行っていないか?そうか。実は今、ご主人から連絡が有って、親戚で不幸
が出来たそうなのだが、携帯を切ったまま忘れているらしくて、何処に行っているのか分からな
いそうなんだ。もしもそちらに行ったら、すぐ私に連絡をくれ。」
流石野田です。咄嗟の嘘が上手だと、こんな時にも感心してしまいます。
野田の所には来ていないと思いながらも、微かな期待を持っていたのですが、慌てようから、野
田も妻の所在を、本当に知らないのだと思いました。
野田は、見つかり次第すぐに連絡すると言い残し、唇が腫れた顔と、まだ梳かしていないボサボ
サの髪のまま、また誰かに携帯を掛けながら車で出て行ってしまいました。その後私も、心当た
りを探し回りましたが、妻は見つかりません。

 

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